1人と1匹の日常
2005年01月03日(月)  あの頃の話をしよう(6)
ある朝のことだ。
ふと新聞を開いたページに、「介助犬りんくう号使用者募集」のお知らせが目に止まった。
思い出した。本で知った介助犬のことを。テレビで観た、介助犬という存在を。

とりあえず電話だけでも掛けてみよう。
そんな気軽な気持ちで、連絡先の電話番号を押した。
介助犬についての簡単な説明を聞いた。
介助犬と生活するには、ユーザーとの相性などをみる、マッチングテストがあるということで、介助犬を育成しているセンターに、行くことになった。

りんくうの先輩の、デモストレーションとして講演などで活躍する介助犬が、目の前で動くのをみつめていた。
初めて、目の前で目にした、介助犬。
トレーナーの指示に確実に動く。
床に落ちたキーを拾ったり。
エレベーターのボタンを押したり。

しっぽをふりふり楽しそうに働く後ろ姿に、微笑ましかった。
机の下に待機していた別の勉強中の介助犬に、スカートから出た足を、ぺロリと舐められた。
覗くと、またしっぽを振ってニッコリ笑ってくれた。

その日、りんくうとのマッチングテストを行った。
トレーナーさんと一緒に、車イスの横を歩くりんくう。
時々、おてんばな素振りを見せては、トレーナーさんに叱られている。
あっという間に終わった、テストだったけれど。
手ごたえはよくわからなかった。

まだあの頃は、力強く、介助犬と絶対に一緒に生活をするんだ!という気持ちは、薄かったのかもしれない・・・。
まだまだ日本で頭数の少ない介助犬を、自分が持てるなんて想像できなかったし、ダメで元々だと思うような所があった。

「今日は、実際に介助犬に会えて、よかった。」
と思い、それだけで、もう満足だった。

帰りに、車に乗ろうとしていると、偶然に、担当トレーナーさんと一緒に帰る、りんくうと出会った。
「では、気をつけてお帰り下さい。」
そう言って、挨拶してから、車に乗り込んだ。

「またね。」
目が合ったりんくうの瞳に、「また会おうね。」
そんな会話をしてみたような・・・ふと、そんな気がした。

それから、連絡はなかった。
やっぱりユーザーはわたしに決まらなかったんだと思った。
そう思うと、不思議と、介助犬と暮らしたい気持ちが、日増しに増して来るのだった。
あの日、実際に、介助犬と会ってから、本や新聞記事などで、介助犬について、自分なりに調べてみた。
知れば知るほど、介助犬と生活したい気持ちは、確実なものになってきていた。

りんくうとの出会いに、あきらめかけていたそんな時、「介助犬りんくう号のユーザーに決まりました。」との、連絡が入った。
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