++いつか海へ還るまで++

雨が降る 代わりに泣いて いるように

降り続く雨 降り止まぬ雨


2005年07月29日(金) 鬼灯(ほおずき)

もうすぐ8月になる。お盆が今年もくる。

お盆はそれまで せいぜいが ただのお盆休みでしかなかったし
お墓参りして実家のお仏壇にお線香と手をあわせて と
行事の一つに過ぎなかった。
ほんの数年前までは。

わたしは 決して感心な未亡人とはいえないと思う。
お花とお茶とお水はさすがに絶やさないように心がけているけど
仏壇の前に座ってお線香あげたり話しかけたりとか
最近なんて特に この前いつあげたっけ?って有様。
きっと細○数子センセーなんかには 即
「アンタ 地獄に堕ちるわよ〜」って烙印おされそうだ。

でもさ PC張り付き状態で仕事必死になってやって
旅行の準備して子供怪獣と応戦しつつ・・
居眠りコクリコクリ・・思わずキーボードにうつ伏して
ハッとして目が覚める。

こういう時 一人で何もかもしなきゃなんないのは
さすがに天を仰ぎたくもなる。

お空のお方に文句の1つもいってやりたい気分。
今頃 気楽にお酒でも飲んでるんでしょうかねぇ・・・

これで お空の方が もしも怒ったりしたら 
あたしゃ逆切れしますね!

忙しいんだよ!疲れても必死にやってるの!!
一人で怪獣抱えて苦労してるんだから 
ちっとは我慢しててよ〜ってね。




生きること と 死ぬこと。
それは遠いようでとても近くにある気がする。
永遠に生きることのできるニンゲンなんていない。
時期は違っても いつかは平等に訪れるものが 死 だ。

生 も 死 も ヒトは その瞬間だけは一人ぼっちで 
往かなければならない。 この厳しい現実。

キレイゴトじゃない 生きることも 死ぬことも
そんな綺麗なモノでは決してない。
少なくともわたしにはそう思える。

誰かの為に生きることはもうできない と
疲れたヒトの 小さな弱々しい声がした。
そうだね 誰かの為に生きることは 時にとても辛くて
苦しいよ。どんなにそれが重いことだか・・・。

だけど だからって 自分の為に もう死にたい っていうのも
どこか 何かが違ってるような気がしてならないんだよ。

誰かの為になんか生きなくてもいい。
それで 生きることを終わらせてしまうくらいなら
自分の為にだけ生きてみることを どうか 始めてみて。

どうせ いつかはカミサマに返す命だから
それなら せめて 最期まで生きることを諦めないで。

これは搾り出すような祈り。



ホスピタルの病院。白い部屋。
いつ止まるともしれない。少しずつ浅くなっていく呼吸。
痛いのか苦しいのかも わからない。
そこに 静かに横たわる ひと。

ただ 死んで往くのを見守り続けていた。
あの1ヶ月。

最期まで人間の能力で残るのは 聴覚と触覚だそうです。
お医者さんがそう言っていた。
だから 話して触れてあげていてくださいと。


わたしが側のソファで眠ってしまっていたあの数十分間。
あの最期の瞬間に アノヒトが聴いて触れたのは何だったんだろうか。
あの最期の瞬間に アノヒトは何を思ったのだろうか。




明日を知らないから人は生きるのかもしれないし
明日がわからないから人は耐えられず死にたくなるのかもしれない。
そんなことを ふと 思う。


生きようと思うのは
現実の死にゆくものを目の前で見てきたからかもしれない。
死んで なお遺されるものを。その一人の人間の命の重みを。


生きることは苦しいことばかりだ。
でも 生きている限り時間は動く過ぎる変わる。
それが例え辛く厳しいものの連続だったとしても だ。

死ぬってことはどれだけ綺麗な言葉で飾っても
無くなるってことだよ。 ぶっつりと無に還るってことだよ。
終わりはいつか来る。 終わらせたくなくても必ず来る。
なら どうせなら 悪あがきしてみないか?

一日待ってみる。それでもダメかもしれない。二日待ってみる。
それでも 変わらないかもしれない。 でも 動いているよ。
絶望の形すら決して同じじゃない。



ツヨイから言える台詞かな。これ。
そうなのかもしれないよね。 
だって これだけぐちゃぐちゃみっともなくも
生きることにしがみついてる。
太鼓判つき復元力。笑うしかないよね。

ダイジョウブ は 自分への呪文。
これでも泣き崩れたかった なんていったら笑われるかな。
蹲って動きたくなかった。倒れ臥してそのままずっと。
それができることなら。それができるジブンなら。

ツヨイことも結構ツライんだよ(笑)



仏壇の前に座れば動けなくなりそうだから座らない。
空に向かってイイワケとか悪態ならいっぱいつく。

それは あの数年間 アノヒトに悟られない為に
つきつづけてた悪態と どこか似ている。

まだ 座っていられないんだよ。
まだ 見届けたいこともやりたいこともある。

そうでなきゃ悔しいから。
まだ 当分 そっちには いってやらない。




だけど あのね

アナタは あたしの半分をやっぱり確かに持っていったのだから
還るときには其処へ還るから。
その時には今度こそアナタだけのあたしになってあげるよ。


お盆 お酒飲みすぎて戻り道 見失わないように。
鬼灯飾っててあげる。 ちゃんと目印に。

言っとくけど 蚊とかだと ダメだからね。
知っての通り 嫌いだからすぐに潰しちゃうよ。

できるならトンボあたりまでにして。
細く網戸開けて 待ってるから。



子供は実家にお泊り。
ちょっと久しぶりの一人の夜。

窓開けてみる空の月 涼しい風 吹いて

後ろで 鮮やかな朱がカラコロと揺れた。 


---------------------------------------------------------


                              ゆうなぎ


 < 過去   INDEX  未来 >


ゆうなぎ [MAIL]

My追加