2005年03月12日(土) |
山河寂寥 ある女官の生涯 杉本 苑子 |
内容 「賢すぎる子供は油断がならない」宮仕えの第一夜に淑子を傷つけた一言。しかし藤原一門の有力者の係累として、時に兄に叔父にまもられながら、後宮の恋を生き、文徳帝の変死、応天門の変、異母妹の美姫高子と在原業平の禁断の恋などを目の当たりに、宮中での地位と評価を築いてゆく。 藤原一族全盛の礎は築かれた。定省というみめよい養子を得た淑子は息子への愛情にかまけはじめる。しかし清和帝が譲位し、相次ぐ帝位の移り変わりに、宮中でいずれおとらぬ実力者となった淑子、高子、基経らは血類で野心を剥き出しにする。天変地異が続き揺れ動く都で、光孝帝が崩御し淑子の夢がかなう日がきた。
藤原基経という人物を私は知らなかった。この物語の主人公である藤原淑子の叔父にあたる。女官としては最高の地位まで上り詰めた女の一生であるけれど、本人にはそんなに出世欲は無かったと思うけれど、うまく時代に乗ったということか。以前 読んだ『橘 三千代』ともども、この時代のほうが今よりもずっと政治の世界はどろどろしていたようだ。政治を操れるというか天皇には自分の姉妹、姪、従姉妹、誰でもいいのだ。次の天皇になる子を産んでくれさえすれば・・。人間の権力に対する欲望も果てしないものがあるようだ。小説として読むぶんにはとても面白い。菅原道真の若かれし頃のことも面白いものだった。
|