読書記録

2005年05月27日(金) 花芯            瀬戸内 晴美

短編集

「いろ」
踊、長唄、清元などの師匠をする るい と20歳も年下の銀二郎の恋物語

「ざくろ」 
なぜ、私が世間的に申し分のない夫と、一人の娘を置いて出奔しなければならなかったのか━今更、それを整然とした理由などで説明するのは嘘だと思うのです。言葉にすればなるような、ちょっとした動機や理由は、あるにはあっても、今となってみれば、私には、それらがみんな、ナンセンスないいわけとしか思われないのです。
ある日、ある時、ふっと、自分の全存在が奇妙な、自信のないものに思われ、過去の自分と何一つ関係のない新しい自分になってみたいと、心ひそかに思わなかった人間がいるでしょうか。
私はただ単に、その想いをつらぬいてみたにすぎないのです。あんな無謀な蛮勇が、私のどこにひそんでいたものか、今でも私には不思議でなりません。

「女子大生・曲愛玲」

「聖衣」

「花芯」
園子と夫雨宮と妹の蓉子、夫の上司の越智と北林未亡人と・・。
「きみのこんな女らしさ、女の完璧さは、私のように、人生のほとんど終りに近づいた者の目には、怪しくみえるより、痛々しい・・・。きみはおそらく、きみの恵まれた稀有な官能に、身を滅ぼされるよ。それが私には見える。それだけに、君がいじらしくてどうしてあげてよいかわからないのだ」


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