2005年12月14日(水) |
闇の左大臣 黒岩 重吾 |
石上朝臣麻呂(いそのかみのあそんまろ) 書籍内容 蘇我臣馬子との戦いに敗れた物部本宗家は、朝廷から絶縁され滅びたが、中立の立場を守った石上物部の血筋をひく物部連麻呂(後の石上朝臣麻呂)は許され、冠位は最下級の刑官に属する囚獄吏の長となる。やがて大友皇子の武術師範になるが、壬申の乱で大海人皇子に敗北。しかしこの負の来歴も麻呂にはひとつの転機であった。遣新羅大使としての働きなどで天武天皇の信を得るが、天武亡きあと藤原朝臣不比等が頭角を現し権力を集中する中で、麻呂の選択は?歴史の暗部を生きた男の謎が明かされる。黒岩重吾の絶筆。
天智朝および天武朝の晩年まで、物部連麻呂は最下級に近い官人だった。だが天武没後、石上の氏族名に変り、和銅元年(西暦708年)、元明天皇の時代に、正二位左大臣にまで昇進した。臣下としては最高位である。ただ、麻呂が何故そこまで出世したのか、その真相は闇に包まれている。
万葉の頃の物語として『橘 三千代』、『山河寂寥』、『薬子の京』、『万葉の華』とか何冊かを読んだ。が、いずれも女性の作品だった。そして主人公はすべて女性だった。 今回、初めて男性の作による男性が主人公の物語を読んだ。 強い描写のなかに何気に今の時代と通じるようなところもあるように感じた。 要は仕事ができて、相手の弱点を握りつつもいらぬことは口にしないことだ。でも主人公が最高位の左大臣に上り詰めたとき、年齢による感傷もあるのだろうが何気に寂寥感を感じたようだ。 読み応えのある本だったと思うのと同時にますます万葉の時代への興味をおぼえた。
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