読書記録

2006年03月08日(水) 風の陣          高橋 克彦



立志篇
大望篇
天命篇、の3部作に分かれた長い小説だった

蝦夷の若者・丸子嶋足は黄金を土産に帰京する陸奥守の従者となり平城京に上がる。
八年が過ぎ、衛士府の官人として異例の出世を遂げた嶋足は、やがて奈良朝を震撼させた政変・橘奈良麻呂の乱の渦中に自らを投じていく。
それは朝廷の陸奥への野心を未然に防ぐために、嶋足は友人物部天鈴の助けを借りながらヤマト勢力の浸透を阻止して蝦夷の独立を一体性を維持しようと計った。

立志篇では奈良麻呂の変、大望篇では仲麻呂の乱、天命篇では道鏡の宇佐神託事件をそれぞれ題材にして嶋足と天鈴の活躍が書かれている。
牡鹿嶋足という人物は実在していて、当時の蝦夷差別のなかでは破格の従四位下という貴族にまで出世している。時代をうまく取り入れてとても面白い小説に仕立て上げている。
まだまだ道鏡の左遷や光仁天皇から桓武天皇へと続く歴史の流れを、作者はどのように展開させていってくれるのか次作を楽しみにしている。


「生きている間はなにも終らぬ。終らぬゆえ生きて行かれる。・・・ここで諦めるわけにはいかぬ。」

「どんな雨も降り止む。雨雲の上には日が輝いている。それを信じて待つだけだ。」


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