読書記録

2006年04月17日(月) 茜さす         永井 路子


 卒論のテーマを『万葉集』の枕詞の研究にしぼった主人公のなつみは、『万葉集』のいくつかの歌から持統女帝の生き方に興味を持ち、同性として女帝の心情に迫ってみたいと思うようになる。卒業後、就職したある編集プロダクションが倒産したのを機に、自分の内部にある古代への思いを断ち切れずにいたなつみは、吉野、明日香へと旅立つ。明日香で山田寺遺跡の発掘に加わり、壬申の乱のコースを徒歩でたどったりして、なつみは歴史を肌で感じ、持統女帝を身近に感じるのだった。考古学研究所の手伝いをするようになったなつみは、鎌倉の実家を離れて、明日香で一人暮らしを送り、経済的には恵まれないながらも、充実の日々を送る。


本のタイトルの『茜さす』は 有名な『万葉集』に収められている相聞歌からとられている

茜さす 紫野ゆき 標野ゆき 野守りは見ずや 君が袖ふる

                  額田女王

そして 主人公の名前に由来した歌も紹介されている

吉野なる 夏実の河の川淀に鴨そ鳴くなる山陰にして

                  湯原王


先に読んだこの作者の『雲と風と』でも感じたことだが、作者の疑問がそのまま登場人物の疑問となって物語が展開されていく
学者たちの解説書をどれだけ読みこなせば、いろんな疑問や矛盾を感じさらに小説へと広がりを見せられるのだろうか
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