読書記録

2006年05月02日(火) 裸足の皇女           永井 路子

 正直 短編集は苦手だ
だが 大津皇子の后になった山辺皇女のことを知りたかった
いろんな解説があるけれど、持統天皇は自分の子供の草壁皇子を帝位につかせたかったというよりは、山辺皇女を皇后にしたくなかったという説に私は真意を感じる



冬の夜、じいの物語
蘇我家の奴だったじいが、体が震えるほど美しかったという大豪族の蘇我氏の娘、小姉君の思い出を孫娘に語る物語
もしかすると、・・・・・若い日、狂暴な思いが体を突きぬけ、姉(小姉君)と弟(馬子)に生まれたことさえ呪わしく思ったことがあったとしたら・・・。そして、美しすぎる姉は、自分の美しさにも、弟の心にも、なにひとつ気づかなかったとしたら・・・


裸足の皇女
天智帝のひめみこ山辺は大津皇子と結ばれ皇后の座にまさにあと一歩と思われたが、草壁皇子が皇太子になりそれどころか仲間と思っていた川嶋皇子の密告によって、叛意をあばかれ自裁せしめられた。大津が自裁したと聞いたときひめみこは我を忘れて邸を飛びだしていた。このとき、ひめみこは裸足だった。


もがりの庭
人間はあるとき、急にすべてを知る。びっしりと蔽っていた堅い萼がはらりと解けて、中から蕾が姿を現すーそんなものかもしれない。
うんざりするほど長く続いたモガリは、新田部にとって夢のようなものであったのか。

天武帝の皇子新田部は母(父は鎌足)が異母兄藤原不比等と結ばれたことを知る。母との間に子までなしたのに不比等はその後、橘三千代とねんごろになり夫婦して官界へ船出していく。



恋の奴
十五歳の郎女に穂積皇子の若き日の恋をおしえてくれたのは母の異母兄である宿奈麻呂だ。天武帝の第一皇子である高市皇子を夫とする但馬皇女は年下の穂積皇子と恋に落ちたのだ。



黒馬の来る夜
藤原麻呂が黒馬に乗って郎女のもとに通ってくる蹄の音を宿奈麻呂は闇のなかで聞く。


水城相聞
宿奈麻呂と結婚した郎女だけれど、一族の長大伴旅人が大宰師として下っていた筑紫で妻を喪ったため女あるじとして筑紫へ出かけていく。
ー異母兄旅人の誘いを機に、私は宿奈麻呂から離れたがっているのだ・・・。都を離れた遠い地にいるという気持ちからなのか迎えにきてくれた一鈍吏に過ぎない大伴百代を愛してしまう。人間には、ある種のめぐりあいがある。地位でもなければ才能でもなく、まして美貌でもないものに、
ふっと魅かれてしまって、どうにもならなくなる、というようなめぐりあいが・・・。


古りにしを
寧楽の都に痘瘡という流行病が発生して、高貴なひとも藤原四兄弟までも襲われてしまった。そんな政界の空白を埋める必要もあってさほど
日の当たらない道を歩いてきた宿奈麻呂にも一躍実務官僚の頭株というべき右代弁という地位がころげこんできた。が彼もまた痘瘡の余燼に
襲われてこの世の人でなくなってしまった。


火の恋
平城宮の後宮の蔵部に仕える女嬬である娘子(おとめ)と、神祇官の下僚である中臣宅守(なかとみのやもり)との恋


妖壺招福
長安の盛り場で、物売りはそんなことを書いた紙片をちらりと見せて、登紀麿のその壺を売りつけたのだった。


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