読書記録

2006年05月05日(金) 髭麻呂           諸田 玲子


 主人公の髭麻呂は検非違使庁に勤める下位の官人で、盗賊追捕の役を仰せつかっている
最初は時代設定は違っても宮部みゆきの『ぼんくら』と似た内容かと思ったが、少々違った
少し前に読んだ永井路子著の『この世をば』の時代の物語だった

上司の命で65代花山天皇の帝位剥奪の際の守備をさせられている

そして これは作者の創造上の人物だろうが藤原春道という盗賊蹴速丸の存在が軸になっている
理解に苦しむのは安和の変で失脚した源高明の娘の明子のこと
この明子という姫は『この世をばわが世とぞ思ふ望月の虧けたることもなしと思えば』 という句を読んだ藤原道長の后ではなかったのか
だがこの物語では 先の安和の変の混乱の際にさらわれて、貧民窟に身を落としたようになっている
それを蹴速丸が助け出したようになっているのだ
こうなれば 作者の想像力としか思えない

でも どんな時代の歴史上の出来事にもその場にいて見ている人間がいるのだ
後から伝えられることのない庶民というか、必死で生きていた市井の人々の歴史があるのだ
私が知りたいのはそうした人々の呻きのような真実なのだけれど・・


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