読書記録

2006年11月08日(水) 月宮の人           杉本 苑子


 徳川2代将軍家忠公とお市御寮人の娘、お江の方とを両親にもち徳川の公武合体政策の下、後水尾天皇に嫁ぎ女帝明正天皇の母となった東福門院和子が主人公
その東福門院に仕えた浅井長政とは母方の従兄妹同士である井ノ口の尼、その尼を義理の叔母に持つ医師曽谷宗祐、そして宗祐が思いを寄せた東福門院和子付きの近江の局との三者三様がそれぞれの思いで語り継いでいくという表現になっている

それにしても『月宮の人』とは・・
物語のラストで、女三代(お市御寮人・お江・そして和子)にわたる慟哭を経て、ようやく運命の重圧から逃れることの出来た女院=和子は、人界とは隔絶した別世界、すなわち、月宮の人となってようやく心の安らぎを得たのだ

きれいな終わり方ではあるけれど、争乱の世を生きるには辛い時代なればこそ女ゆえに血を継承していくこともできたのだろう
やはり男の作家と女の作家では視点が違うのだ


花は根に鳥は古巣に帰るなり
 行く手を照らせ中空の月  

           お市御寮人辞世









 < 過去  INDEX  未来 >


fuu [MAIL]