読書記録

2006年11月15日(水) 月を吐く            諸田 玲子


 先日 『女にこそあれ次郎法師』を読んで
どうしても この物語での主人公である瀬名との関係を知りたかったので、2度目になるけれど改めて読み返してみた
でも『月を吐く』では井伊家との関係は書かれていたけれど
残念なことに次郎法師である祐とのからみはなかった
まぁ ある意味当たり前のことだろう・・

今川義元の領地である駿河に人質として暮らしていた松平元信(家康)と結婚した瀬名だったけれど、信長が桶狭間で義元の首を落としたことから瀬名の運命が狂っていく
架空の人物なのか瀬名の実家である関口家で育てられたきくねと広親姉弟の存在が光る
築山殿(瀬名)が殺されたようになっている歴史の言い伝えを、作者はきくねが身代わりになったように物語を書いた
満更 突拍子もないことではないだろう
きっとそういうことだったかも知れない・・と私も思う

それにしても『月を吐く』というタイトルが面白い
随所で月を眺める描写が美しい

陽が沈めば月が出る。月が沈めば陽が昇る。
太陽も月も空にあるのはいっとき。
昇っては沈む、そのくり返しだ。
東山の頂が月を吐き出す。
月は夜ごと生まれ変わる。満月にもなれば新月にもなる。
なれど山は飽きもせず、月を吐き出す。
いくら吐き出しても、腹のなかに炎の塊があるゆえ・・・
満月━明日から欠けてゆく月である。
満月はひと夜の夢。

ひとつ事を成すには、なにかを捨てなければならない。
なにもかも満たされることなどありえないのだ。


(私は広親のファンでこの本はお気に入りのひとつだ)











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