読書記録

2006年12月21日(木) 西行桜          辻井 喬

竹生島
仕事にかまけていて妻に自殺されてから、琵琶湖に面した長浜に住んで設計事務所を開いた。隣家の叔父と姪という組み合わせの男女に竹生島へ招待されるが、その島で男女はいなくなってしまった。想像を飛躍させて、老人(叔父)が竹生島を守護し琵琶湖を取巻く地域に住む人々の安全を司る龍神であり、遠藤佐智子(姪)が観音寺の本尊である弁才天であっても少しもおかしくなくなってくる。
野宮
汚職事件に連座して、執行猶予つきの有罪判決を受けて社を辞めて京都に隠棲した田崎良介を取材する役を振り当てられた。そんな中で田崎良介の情を受けるようになった鈴鹿悠子が急死した。
「稀に、得意の時期に必ず運命に裏切られる星を持っている者がいる」
遠い繁栄の灯火を眺めながら田崎が言った。鈴鹿悠子の急死から立ち直ろうとして必死に考えてきたことを、先刻から彼は語っているのであった。
通盛
公立中学校の教師として生きて、校長としての任期が迫ってきたのを機に句集をまとめようと高校の寮に入るまで母と二人で住んでいた土地の近くにある温泉場にやってきた。
父は月に一度か二度、人目を忍ぶように訪れるだけだったが、そんな両親のことをよく知っている人物に温泉で出会った。
西行桜
敗戦後、華族制度がなくなって完全に順応していけない元子爵の父は西行を尊敬していた。
ヨーロッパの古い楽器を演奏してバロック音楽の演奏会を始めた江口紀美子は、父の自伝を出版社に勤める畑に依頼する。


今回もタイトルにひかれて読んだけれどやはり短編集は苦手だ。
人が死ぬという当たり前の事実の裏には、いろんな人々の想いがある。
作者は謡曲集のなかに、幻想と劇的構成が緊密な文学空間を作っているとあとがきに書いているが、私としてはただただ人生経験の不足を改めて実感するのみ。
たぶんこれから先も私が決して経験しないようなことだからなのか・・。













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fuu [MAIL]