読書記録

2007年03月24日(土) 火宅の坂            澤田 ふじ子

延享四年、大垣藩が断行した永御暇(ながのいとま)の犠牲となった下級藩士の天江吉兵衛は、町絵師として身を立ててゆくことを決意し、失意の者たちと助け合いながら生きてゆこうとする。

現代にも通ずるリストラ、人員削減、合理化というテーマで書かれた物語だがバブル経済の中心的役割を果たしてきた<お偉方>は、自らの責任を回避しこの惨状に素知らぬ体だ。かつての日本人、特に明治期の気骨をそなえた経済人なら、高職についていた責任を潔くとり、万人に詫びていただろう、と作者はあとがきに記している。
私も真にそう思う。
現代のお偉方もどの人も皆、己れの立場や権利にしがみついて問題の責任には知らん顔をする。いつの時代も気概のないリーダーのもとで泣かされるのは、天江吉兵衛とわれわれ庶民なのだ。


人間は考え方次第でどのようにでも生きられ、貧しさを耐えると思えば苦労だが、貧乏を楽しむ境地に到達すれば、それは清貧となる。かえって世俗で栄達を図ろうと競う人々の姿が、狂態に映ってくる。









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