| 2007年05月24日(木) |
対岸の彼女 角田 光代 |
「現在」と「過去」の出来事が交互に書かれて、同時進行している。「現在」では日常の生活に追われる小夜子と葵が、「過去」では高校生の「葵」と「ナナコ」の出会いが書かれている。 夫と3歳の娘がいる普通の主婦の小夜子が、職を探し始める。たまたま面接に行った先の社長が同じ大学の同期だった葵であった。2人は急速に仲良くなるが、立場の違いなどから次第に小夜子が葵に不信感を抱き始める。同僚から葵の高校時代の過去を聞いた小夜子は、 働く女だって専業主婦だって・・みんないつもどこかしら不安や不満を抱えた一人の人間で、似たもの同士なのかもしれないと思う。そして大方の女は子供の頃から「友人」という名の下に派閥をつくり、醜くも傷つけあい、未熟な者は、いじめというかたちで社会人になってからもそんな幼稚な行動を続けてしまうのだ。
私も常日ごろから人はいま、目に見えているものしか信じないのだと感じている。だから眼に見えないものにはとかく不安を感じる。 人は生きていくためにいろいろ傷ついていくのだけれど、タイトルの対岸の彼女は正に自分自身なのだ・・と強く思った。
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