読書記録

2007年07月10日(火) 裏葉菊            真野 ひろみ

時代の人柱たらん ! として会津戦争を戦った郡上八幡藩士たちの哀切。

自分は何をすべきなのか、自分には何ができるのか、そして、一体何が世の中の正しい姿なのか。胖之助には何一つ分らなかった。
が、このまま「官軍」が天下をとれば、間違った世の中がやってくるような気がしてならない。
一介の外様藩にすぎなかった薩長が錦の御旗を掲げたとたん、諸藩は雪崩をうって薩長軍に膝を屈した。朝敵の汚名を着るのを恐れ、いともあっさりと徳川家を見限ったのである。
忠義を忘れ、強い者に媚びへつらう人間がつくる新しい日本。このまま「官軍」の勢いに押し流されていけば、この日本はきっと芯の腐った国になってしまう━。
次男ゆえ冷や飯食らいの胖之助だが、勤王と佐幕の二俣をかけた藩の企みなど知る由もなく脱藩して、自分の手で世の中を正しくするため会津へ向かったのだった。
会津が滅び官軍の勝利となってからは、胖之助たち脱藩藩士は国元へ護送され幽閉された
そんな藩士たちを救ってくれたのは胖之助が若き日に屈折した日々の中で
虐げていた女中の おつる だった
だが 胖之助に陵辱されて子供を産んだ おつる は、以前のおびえたように弱い おつる ではなくて、子供と二人で強く生きて行くことを選んだのだ

梅が白雪を凌いで馥郁と薫るように、葉菊が霜を凌いで美しい大輪の花を咲かせるように、おつるも胖之助も、つらい人柱の境遇を耐え抜いて、これからひと花でもふた花でも咲かすことができるにちがいない。

葉菊というのは郡上八幡の青山家の家紋だった
そして裏葉菊というタイトルは、藩に背いて脱藩してまで幕末動乱期を駆け抜けた胖之助たちのことなのか、藩士たちを天秤にかけたお家のことだったのか・・















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