| 2007年07月14日(土) |
10歳の放浪記 上條 さなえ |
昭和35年、10歳だった著者は父とふたり、池袋のドヤ街でその日暮らしをしていた。そんな著者を支えてくれたのは、街で出会ったパチンコ屋のお兄さん、やくざのお兄さん、床屋のお姉さん…いろんな人に支えられて10歳でホームレスをしていたのだ。母も異父姉もいたけれど著者の なこちゃん はそんな人々に支えられて、私も覚えのあるやさしかった時代を生きていた。
父との放浪生活に入る前に小学校の同級生と語る場面がいじらしい。 「でも、なこちゃんは、あたいよりしあわせだよ。電器がつかなくても、ガスが使えなくても、お父ちゃんとお母ちゃんがいるじゃん。あたい、早く大人になりたいな。子どもって、かなしいよね。大人に決められたら逆らえないし、どんなにいやなことだって、がまんしなくちゃならないんだもん」 最近の子どもへの虐待を聞くにつけ、大人はほんとうに心して子供と向き合わなければならないと切に思う。 どの子もかけがいのない宝物なのだから。
物語の最後で養護学校に引き取られることになって池袋の駅から千葉へ行く車中で、付き添いの先生が下手なウソをついて なこちゃん にお弁当を分けてくれるシーンにはほんとうに泣けてきた 「早苗ちゃん、教師にとって教え子はね、自分の子と一緒ぐらい大切な存在なんだよ。菓子パンじゃなく、他の子と同じように、お弁当を食べさせたかった」
その後 養護学園で小学校を終え、中学生になって母親に引き取られお風呂もトイレもない4畳半一間のアパート生活を送る それでも小学校教員から児童文学作家としてデビューし、埼玉県の児童館館長を務め、県教育委員を経て同委員長にまでなっている すばらしい経歴だ
逆境に負けないで立派で子供の気持ちが分る大人になった著者に よく頑張ったね、と私からもエールを送りたいと心から思った
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