| 2007年07月18日(水) |
しあわせのゆでたまご 上條 さなえ |
5年生の唯には北斗と天童という二人の弟がいる が、唯も含めてみんな母親が違う 父親といえばパチンコ三昧の毎日だ 一家の生活費は旅館を経営しているおばあちゃんが送ってきてくれる
そんな父親のもとで唯は二人は二人の弟にも無関心だったけれど いろんな出来事があって だんだんと家族というものを考えるようになっていく
この本の主人公唯には、モデルがいます。 勉強ができて、しっかりしていて、それでいてちょっぴり、コミカルな唯は、私の姉そのものです。 私の姉は、私とほんとうの姉妹ではありません。母は同じですが、父が違うのです。姉の父は、太平洋戦争で戦死しました。 さらに、姉の上に、兄がいるのを知ったのは、私が小学校四年生のときでした。兄と姉は、同じ父を持っていました。私の父は、兄と姉に冷たく当たり、二人を不幸にしました。 でも姉は、私が病気をすると、枕もとにいっしょに寝そべって、「ナコちゃん、早くよくなるといいね」と声をかけてくれました。姉は私を「ナコちゃん」と呼び、私は姉を「マア」と呼んでいました。私は姉が大好きでした。 私が現在勤務する児童館には、父親が蒸発した子どもや、母親が蒸発した子どもも遊びにきます。 のこされた父親、母親どうしの再婚もあります。 「お父さんが、かわっちゃった」という子の眼のなかに、”さびしさ”を感じるとき、私は何もいうことができません。つらいし、胸がいっぱいになります。 そんな子たちに、この物語を贈りたいと思いました。 唯は、北斗を、天童を、どの母たちより深く愛するようになります。二人を いやします。北斗と天童も、唯を信頼しています。 「親はなくとも、子は育つのです。 では、唯のさびしさを、だれがいやすのでしょうか。ゆでたまごに、それを託しました。 私の姉もそうですが、どんなに過酷な境遇でも、それに負けない強い心を持った人たちがたくさんいます。唯の強い心が、唯自身をいつかほんとうのしあわせにたどりつかせるでしょう。 唯に「しあわせのゆでたまご」があるかぎり、唯は元気です。そう信じています。
作者 あとがき より
晴れ。 きょう、しあわせ。 あした、不幸でものりこえられそう。
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