読書記録

2007年08月30日(木) 深い河              遠藤 周作





十年以上も前に読んだものを読み返してみた

人間は生きている限りは何かを抱えて、何かを背負っている

美津子、磯辺、沼田、木口、そして大津
それぞれの個々の人生において背負ってきたものの答えを探しに、同じインド旅行に居合わせる

私は同じ女性としてガンで亡くなった磯辺の妻や美津子を思う
「わたくし・・・必ず・・・生まれかわるから、この世界の何処かに。探して・・・わたくしを見つけて・・・約束よ、約束よ」
こう言って死んでいった磯辺の妻よりは
「神さま、あの人をあなたから奪ってみましょうか」と真面目なだけの大津を誘惑する美津子のほうに魅力を感じる

人間の転生を信じて母なる河ガンジスに向かう人も多いようだが、それとは別にインドにあこがれを持つ人もまた多いようだ
人は一人では生きていけないものだと思うけれど、すべての人が転生を願うわけでもないだろう・・と思う

「墓場に住んでいる女神チャームンダーの乳房はもう老婆のように萎びています。でもその萎びた乳房から乳を出して、並んでいる子供たちに与えています。彼女の右足はハンセン氏病のため、ただれているのがわかりますか。腹部も飢えでへこみにへこみ、しかもそこには蠍が噛みついているでしょう。彼女はそんな病苦や痛みに耐えながらも、萎びた乳房から人間に乳を与えているんです。」
「彼女は・・・印度人の苦しみのすべてを表わしているんです。長い間、印度人が味わわねばならなかった病苦や死や飢えがこの像に出てます。長い間、彼等が苦しんできたすべての病気にこの女神はかかっています。コブラや蠍の毒にも耐えています。それなのに彼女は・・・喘ぎながら、萎びた乳房で乳を人間に与えている。これが印度です。この印度を皆さんにお見せしたかった」









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