淡路島の貧農の家でそだったお登勢が、徳島藩の武家に奉公にいく船の中で、勤王の志士だった津田貢と出会う。 奉公した武家の一人娘である志津が津田と結婚して、その後離別して東京にいってもお登勢の津田への気持ちは変わることなく奉公一筋に生きていく。 明治維新という歴史の流れの中で新しい道をもとめて開拓移民として生きていくことにした津田を追ってお登勢も静内へ行き津田とむすばれる。過酷な自然に打ちのめされる稲田藩士たちだったけれど、津田はそんな環境に負けて志津と駆け落ちをして惨殺されてしまった。それでもお登勢は野生馬の飼育に生きる道をみつけて北の大地でたくましく生きていくのだ。
幕末の池田屋騒動や徳島藩と稲田家の事情やら、時代背景もかなりの部分を占める読み応えのある物語だった。 そして開拓前の現在とは比べ物にはならないだろう北海道の過酷な自然描写も詳しい。 それにしてもいつどんな時も自分の生きる人生の筋道をはっきり見極めていくお登勢という女性の強さは何処からくるのだろう。 志津の兄である睦太郎に求愛されても自分を見失うことなく、はっきりと自分の気持ちを伝える。 お登勢という女性が実在したかはともかくとして、多くの稲田藩志とその家族が静内で骨をうずめたことは事実なのだ。 とても便利になった現在に生きる我々のほうが刹那にながされて生きていることを改めて考え直さなければと思ったことだ。
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