| 2008年02月18日(月) |
静かな大地 池澤 夏樹 |
御一新と稲田騒動のあとで、北海道の静内へ開拓移民として家族とともに入植した三郎と志郎の兄弟の物語 物語は由良が幼い頃に父の志郎から聞かされた伯父の話がもとになっている
淡路島から移住してすぐにアイヌの子供オシアンクル(秋山五郎)やその家族と仲良くなり、彼らが示す数々の生活の知恵を知った兄弟にとって、アイヌは決してさげすみみの対象ではなく、北海道=アイヌモシリ(アイヌの静かな地)に生きる先人として尊敬すべき人々であった。 札幌官園で北海道の地に適した農業や畜産を一年間学んだ三郎は、静内に戻ってオシアンクルたちアイヌの協力を得て馬鈴薯や唐黍を育て、馬を飼う大規模な農場を拓く。三郎は刀より言葉を大切にするアイヌに学び、農場では徹底した「民主主義」を実践するが結果をだしていく宗形牧場は「和人」による妬み嫉みは激しく、アイヌ贔屓・アイヌ寄りと噂される三郎の「夢」はついえてしまう。 折りしも難産で亡くなってしまった妻であるエカリアン(雪乃)のあとを追うように三郎も自分の胸に銃口を向けた。
今でいうところの『アイヌ民族との共生への夢 』は完成こそしなかったが、北海道の厳しい自然を相手の原野を開拓した事実はいまになっても静かに語り伝えられているのだ
もちろん作者は別だけれど先に読んだ『お登勢』の続編だと私は思う この作者の先祖も北海道の開拓移民だったそうで、折りあれば小説にしたいと構想を練っておられたようで現在は沖縄に在住していると知った ともに歴史上ではたいへんな苦労をしいられた土地だ ゆえに これからどんな物語を編み出してくださるのかとても楽しみだ
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