読書記録

2008年08月16日(土) ぬばたま              あさの あつこ


  壱
職場の不祥事の責任を背負わされて退職し、妻にも愛想をつかされた男。
  弐
故郷からの一本の電話を機に、幼い頃の約束を果たそうと思い立った主婦。
  参
自殺した友人の葬式に出席するため、田舎に戻った青年。
  四
死者が見える能力を持ち、彼らをいわば成仏させることを使命とする若い女性。
  終話
四の主人公がほんとうは山でなくなっていることを、同じように死者が見える男が教えてあげる話にでてきたお婆さんの語り。


タイトルの「ぬばたま」とはヒオウギの種子で、黒いものにかかる枕詞だそうだ。そしてもしもこれが「山」にかかるとしたら、その黒さとは、単に日の差さない山奥の暗がりではなく、山が内包する深い暗部を指しているのだろう。山は人間を飲み込んでしまう恐ろしさを秘めているのだ。
各編にでてくる色と繰り返しの言葉。
人の心に覆いかぶさるように生きている山の怖さを、ホラーを思わせるかのような恐ろしさで読後にじわじわと感じている。




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