| 2008年10月09日(木) |
小説紫式部「香子の恋」 三枝 和子 |
今年は源氏物語が書かれて千年だそうで、図書館には源氏物語関連の図書を揃えたコーナーが作ってあった。 そして 今回私が読んだ「香子の恋」は 作者がシリーズにしているものだ 「小説清少納言 諾子の恋」 「小説かげろうの日記 道綱母・寧子の恋」 「小説和泉式部 許子の恋」 そして 「小説紫式部 香子の恋」 と続く。
源氏物語はあまりにも有名だが、 書き手の紫式部のことは不明な点が多いようだ。 ━越前国司、藤原為時の娘でその父の赴任先である越前で「源氏物語」が書き始められたと何かで読んだ覚えはあったけれど、意にそわぬ結婚で藤原宣考という人物がおり、まして「賢子」という娘までなしていたことは知らなかった。 それにしても 香子が越前から京に戻り道長の娘である中宮「彰子」の女御になり、宮中や道長の権力をある意味冷ややかに書いている様は面白いものだった。
年暮れて わがよふけゆく 風の音に こころのうちの すさまじきかな (━今年も終りになって、わたしの生涯も老いて終りに近づくことを思いながら、この夜更けの風に自分の心のなかを吹いていく荒涼とした淋しさを重ねています)
世の中を なに嘆かまし 山桜 花見るほどの 心なりせば (━山桜の花を眺めているときのような、物思いのない心であったなら、世のなかを嘆いて暮らしたりはしないものを、いまのわたしは、物思いいっぱい、嘆きいっぱいで暮らしているのです)
そして 今生の終りの歌・・・
(ふ) 奥山の 松には氷る 雪よりも 我が身世に終る 程ぞ悲しき
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