| 2009年11月23日(月) |
恋衣 とはずがたり 奥山 景布子 |
過去に 作者の違うとはずがたりの物語を少し読んだ。
女西行 とはずがたりの世界 松本 寧至 中世炎上 瀬戸内 晴美 新とはずがたり 杉本 苑子
そして今回は二条と実兼との間に生まれた ”露子” という女性が主人公の物語だ。 この物語の中では露子は、実兼の実子のいなかった忠実な家司である橘久永のもとで大切に育てられたという設定になっていた。 そしてある日 父実兼が母二条の書き残した5冊の草子をもってきたのだ。 この中から勅撰の儀に相応しい歌の書き抜きをしてほしいとのことだった。 それからの露子は母二条の生き様と己のルーツをたどる日々を送ることになった。
願わくば花の下にて春死なん その二月の望月の頃
と歌った西行に対して 二条は女西行ともいわれるが 今回の作者は 願わくば花の下にていつ死なん 雲と水とに任するごとく とした。 西行の本歌取りとして、この先の命は、時の流れ、自然の流れに従って。 尽きる折、もし花があってくれれば、幸い。 人を恨み羨み、己を責め苛んで生きるのは、虚しきこと。
母の遺した草子を書写した露子がそれの表紙に書き加えたのが ”とはずがたり”という文字だった。
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