第一章 ゴミ屋敷 第二章 家族 第三章 巡礼
第一章で この物語の主人公は誰なのだろうと思っていた。 それが第二章ではっきりして、ゴミ屋敷の住人忠市だった。 昭和一ケタ生れの忠市が普通に働いて、普通に家庭を持ってそして失ってしまった。 真面目に働いてきたはずなのにひとり息子が亡くなり妻が去り、家業もうまく立ちゆかなくなってきて忠市はこれ以上何も失いたくない・・とゴミ集めに走ってしまう。 ゴミ屋敷としてテレビに出た忠市を音信不通だった弟の修次が第三章で再び登場して、ゴミ屋敷をキレイに片付けたあとに兄の忠市と四国巡礼に旅立つ そして忠市はその巡礼の途中で死んでしまうのだ。
妻は逃げた。子は死んだ。妻は去った。父は死んだ。忠市の中には、そのような過去の節目しかない。闇の中に羽を休めて飛んで行ってしまう鳩のような「過去」に手を伸ばしても、儚ない過去は断片となって消えて行く―まるで、ゴミの山に埋もれて見えなくなってしまった「有用なもの」のように。
自分が積み集めた物が「ゴミ」であるのは、忠市にも分かっている。「片付けろ」と言われれば片付けなければいけないことも、分かっている。しかし、それを片付けてしまったら、どうなるのだろう? 自分には、もうなにもすることがない。片付けられて、すべてがなくなって、元に戻った時、生きて来た時間もなくなってしまう。生きて来た時間が、「無意味」というものに変質して、消滅してしまう。
修次は、暗い闇の中にいた自分の兄が、金色の仏と夜の中で出会ったのだと思った。そのように思いたかった―。
私も・・・ 失ってしまったかもしれないものを毎日追い続けている。 もがいてももがいても答えが見つからない日々を生きている。
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