| 2010年07月17日(土) |
天風の彩王 藤原不比等 黒岩重吾 |
645年の乙巳のクーデターの黒幕だった中臣鎌足の二男として生まれ、持統・文武・元明・元正の各天皇の厚い信任を得て、娘二人を入内させて天皇の外祖父や皇后の父となり、天皇家の外戚としての位置を確保していった。
最高峰に座るよりも、その下あたりにいるのが一番心地が良い
天武は人間的な面で鎌足に好意を抱いていなかった。自分が策略家だけに、天武は鎌足の胸中が読め、鼻についてならなかったのであろう。 史に魅せられ、彼を登用したのは天武の皇后だった女帝・持統天皇である。 もし女帝が天武よりの早く亡くなっていたなら、史があそこまで出世し、藤原氏繁栄の基盤が、あの時代に築かれたかどうかは疑わしい。
障害があればあるほど闘志も燃える。生の充実感を味わえるというものだ。 山を登り頂上を極めるには汗を流さねばならない。岩を超え、生い繁る樹林をかいくぐってこそ汗も流れるし、喜びの大きい。それでこそ更に高い頂きに挑戦できるのである。 それが史の人生観だった。
不比等 と 妻になった三千代との関係が面白い。 二人がそれぞれの立場で最高の地位につくためにお互いを上手く利用しただけだと今までは思っていたが、この物語では心から愛し合ったことがわかる。 どちらも強い男、賢い女を求めていて正に理想の相手を見つけたということなのだ。
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