| 2011年01月15日(土) |
大和寸感 奈良・大和路の昭和春秋 青山 茂 |
『奈良県観光』に昭和51年から平成元年まで13年と8カ月、160回余にわたって執筆されたコラムをまとめたもので、 著者は「一寸の虫」の魂を込めて書き続けた、過ぎ去りし「昭和」の奈良・大和路、その文化と観光と記す。
平成元年に廃刊となったこの『奈良県観光』という月刊誌を本当に残念なことだが私は知らなかった。 新聞社の奈良支局からスタートして 新聞記者としていろいろなイベントを手がけてきた作者ゆえに、私たちの知らない知りえなかった裏話や苦労話しが満載でとても面白く読んだ。
大和に残る多くの文化財が、ただ偶然に残ったのではなく、その地元の人たちの思慕の情で守られてきたということを忘れてはならない。
歴史の知識としては、東大寺は聖武天皇の勅願で創建され、法隆寺は聖徳太子ゆかりの寺ではあろう。 それはそれでよいのだが、歴史で往々欠落しているのは、仏像は仏師が造り、堂塔は棟梁や大工が建てた、という事実ではないだろうか。 歴史の表層から、ともすれば沈み埋もれていく人たちの学問を超越した経験の集積こそ、ある意味では歴史の実在ではないのか。
大仏商売という言葉もあって 寺の拝観料を取ってしまえばそれでしまい、土産物を売ればそれで終わり、といったような不遜な驕った気持に堕っていないだろうか。 奈良や大和はどこにも負けない一級品の文化財をもっているのだから、 それに負けないくらいの気持で向き合わなければいけないとも書いている。
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