読書記録

2011年04月29日(金) あんご愛加那              小石 房子


 あんごとは 薩摩藩の流人の島だった大島で本土から来た役人の身のまわりの世話をする島妻のことである。
そして 愛加那とは島津斉彬死去のあと、大島に流された西郷隆盛の島妻の名である。

西郷の奄美潜居を支え、菊次郎・菊草(菊子)という二人の子をもうけながらも西郷に引き取られた子どもを思いながら、寂しさに耐え一人で死んでいった愛加那の物語だった。

菊次郎は最初こそ シマジンと差別されたがアメリカにも留学して西南の役にも参加して右足膝下を切断という不幸はあったけれど、その後はその頃日本の統治下にあった台湾の宜蘭庁長(県知事)にも京都市長にもなった。

だが 娘の菊草は西郷の従兄弟である大山誠之助と結婚したものの西南の役後、自暴自棄になってしまった夫ゆえに経済的に困窮して結婚生活はあまり幸せではなかったようだ。

そして 愛加那は菊次郎とは島を出ていってから2度ほど逢ったけれど、菊草とはついに逢えぬまま亡くなってしまうのだ。


作者があとがきに書いた言葉が私の胸に残る。

たとえ自立しても、子どもは生涯母親の体内に生き続けるのです。自立は大切ですが、孤立ではないのです。動物は子離れが出来ますが、人間は母子の絆を絶つことが出来ません。人間だから出来ないのです。















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