高校2年生の高志はふとしたハズミで担任教師を刺してしまい、退校処分を受けた。 高志を引き取りに行った父、竹一は妻と娘の待つ家には帰らず、自分の故郷へ向けた父と子の旅に出た。 途中 会津に住んでいる下の弟の梅三.一ノ関に住んでいる妹の藤子、盛岡に住んでいる姉の百合、そして最期に自分を生み育て上の弟桐二の住む阿慈へと向かった。 若い頃 竹一が捨てた故郷は人から蔑まれるオンボーと言われる火葬場が家業だったのだ。 竹一は兄弟やその子ども達と久しぶりの再会をし、頑な高志とも自分の思いやいろんな話しをしながら旅をしていくのだ。
この小説は1980年1月1日から同年10月31日まで朝日新聞で連載されていたらしい。 そして1983年には竹一・小林桂樹、高志・中井貴一で映画化もされていたらしい。 知らなかったなぁ。 そして・・・私はこの小説を読みながらタイトルの『父と子』ではないが何を期待しているのだろう、という思いがずっとあった。 それにしてもまるで映画を見ているような、そんな感じのとても読みやすい小説だった。
「うまれたところだから、悲しんでもしかたねえべ。人間はどこさうまれても、父さん母さんのいたところが、在所だわさ」
「百合さんはオンボーの子だから虫けらみてにいわれて不幸だったといいなはるが……そんなことはない……ヤキバほど大切な所はねえもの。一生医者にかからねえ達者な人でもヤキバだけは一どは厄介になるだでね。そったら大事な家の子がどうして虫けらだべかのう」
「むかしの話をしていると、元気が出るんだ。むかしの話に、いっぱい活力のもとがあるんだ」
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