読書記録

2011年08月13日(土) 悪党重源               高橋 直樹


 中世を創った男



確かに重源は聖僧ではないけれど、平家の焼き討ちにあった東大寺の大勧進を悪党呼ばわりするか、とかなり興味をもって読んだ。
策士というか今でいうところの起業家や事業家のような重源の若き日の物語だった。



大仏が鋳造された時期は、源平争覇の内乱時代でもある。鎌倉で源頼朝が勃興し、平家が壇ノ浦で滅んでいった。そのいくさぶりは現代にまで語り継がれているが、当時の民衆が熱狂したのは大仏再建のほうだ。源氏と平家の合戦など、彼らには何もかかわりもなかった。

そして日本国の面目をかけたこの公共事業が、六十一歳になるまで公職とは無縁だった重源によって請け負われたのだ。
大仏の鋳造が終了すると、重源は続いて大仏殿の造営に着手する。ここでも重源は民衆の期待を裏切らなかった。

重源の大仏再建は、産業を活性化するための下地となる道路や港を整備し、需要地へ向けて商品を大量生産することを可能にした。このとき大仏は日本の経済の中心にあり、産業はその周りを循環していた。人々は大仏へ一方的に奉仕するのではなく、そこに生まれる利益をも得ていたのである。












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