昭和三十七年。 三等機関士の関本源蔵は北洋にサケマス漁の航海に出た。航行のさなか、かつてない大時化に襲われ、船は遭難危機に。その時源蔵が思いを馳せたのは、十八年前にサイパンで別れた、今は亡き父親のことだった。父親は言った。「お母さんを助けてやれ」―。 そんな父の言葉を折りにふれては思い出し、母を楽にしたいためその頃としては比較的給料の良かった船員になった。 そして家庭をもってからも妻や子を思いながら数ヶ月に渡る航海をしていた。
海しか知らない源蔵が 息子との間に溝が出来たことを憂いながら、義父から頼まれた知人の息子とともに南氷洋で鯨を追う航海に出た。 だが 運悪く天候悪化による時化に合い死を直ぐ側に感じながらも奇跡の生還をするのだった。
今の時代とは違った無骨で不器用だけれど 家族のことはすごく愛している荒ぶる昭和の海に生きた男の物語だった。
ただひとつ言えることは、父の生き様は己が人生の指針となる。 もちろん、針の指し示す方向に正解があるとは限らない。真逆に向うも良しである。要は、親の生き様から何を学ぶかが重要なのだ。そう、親は子の羅針となればそれでいいのだ。
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