読書記録

2025年11月12日(水) 真鶴 / 川上 弘美



 失踪した夫を思いつつ、恋人の青茲と付き合う京は、夫、礼の日記に、「真鶴」という文字を見つける。“ついてくるもの”にひかれて「真鶴」へ向かう京。夫は「真鶴」にいるのか?


 置いてゆかれたその後も、愛していた。愛することをやめられなかった。ないものを愛することは、むずかしい。愛している、そのこころもちが、こころもち自身の中に、はいりこんでしまう。袋が裏がえるように、こころもちも、裏がえってしまう。
 裏がえった愛は、それでは愛の反対のものになるのか。
 ちがう。
 愛の反対は、憎しみか。あるいは、愛と同義なのが、憎しみか。どちらにしても、そんなすっきりとしたものには、なってくれなかった。
おぼろな、よどんだ、漠然とした、異質なものに、それは、なった。




例えば、
 池に石を投げたとしてさざ波はどれくらい続くのだろうか
 石の大きさや、投げた人間の力加減とかで違ってくるんだろうな、というそんな読後感。









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