なか杉こうの日記
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2005年10月09日(日) 顔から火が出る思いのはなし。

どうでもよい話であるが、わたしが小学校の頃、川端康成氏はまだご存命でわたしの通っていた小学校のある町に住んでいた。あるとき川端氏が小学校に子供用の本の全集を寄贈された。たぶん編纂か何かされたのだと思う。

担任の先生がこれこれこういう作家の方から本を頂きましたから、感想を書くように、とクラスの何人かを選んで言った。で、その中にわたしも入っていた。しかもその感想文というのがたしかできるだけ早く書いてきなさいというものだった。それでわたしは図書館から本の一冊を借り、読み始めた。

たしか日本のおかしい昔話(たとえばきっちょむさんとか・・・)だったと思う。わたしは翌日までに読もうと必死になって頑張った。しかしさっぱり内容が頭に入ってこなかった。しかし感想を書かなければならないので、ともかくわからないまま、めちゃくちゃに書いた・・・。

担任の先生はその感想文をまとめて、きっとお礼にと川端康成氏に渡したか送ったかしたのだろう。ときどき思い出すと顔から火が出る思いだ。しかし考えるに、川端氏も児童文学全集かなにかに自分の名前だけ貸したのかもしれない。それでどっさり全集が届いてどうしてよいかわからなかったから、地元の小学校に寄贈されたのだろう。先生方はそれじゃ悪いから子どもに何か書かせようっていうんで書かせたのだろう。

だからたいした意味はないのだ。きっと川端氏の奥さんか誰かが受け取って、「あなた○○小学校の生徒さんたちの感想だそうよ」なんて言って、川端氏の机のそばに封筒を置いておく。川端氏は「あ、そう」と言ってちらりと分厚い封筒を眺め、また著作に没頭する・・・。

そのうち埃をかぶった封筒は奥さんの手によってどこかに片付けられ、やがて処分された、ということになったのだろう、とほぼ確信する。

そう思うとよかったーと顔から火が消えるのである。


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