ずいずいずっころばし
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おいしい野菜スープが出来た。
少しお裾分けとある人のところへ持っていった。
お気に入りの白磁のキャセロールに入れて持っていった。
日を置いて器を取りに行くと「ああ。あの器、割れちゃった」とあっさり言う。
内心ぎょっとして、返答につまっていると、
「あれ温めようとガスにかけたら割れちゃったのよ」と言う。
ひょえ〜〜〜〜〜〜〜!
陶器をそのまま火にかけたら割れるにきまっているじゃないか・・・・何という常識のなさ!
私はそのとき自分の顔がどんな表情をしていたか鏡をみなくても分かった。
「ナンタルチア、サンタルチア!」
紛れもなくこれは「惨たるちあ」ざんす!
しかし、元を正せば、おいしいスープを味わって頂こうという事だったので、怒るなんてことはお門違いのことなのだろう。誰にでもある「粗相」なのだから・・・
「しかし」・・・という但し書きが心の中に去来したことは確かなことだった。
私はふとお茶の稽古の時のことを思い出した。
お茶の師匠は普段の稽古でも名人が作った茶碗を惜しげもなく弟子に使わせる人だった。
あるとき、若いお弟子さんが名品と言われた楽茶碗を稽古の時に使用した。
楽茶碗は焼きが柔らかいので、扱いには気を遣わなければならない。
茶室でお点前がはじまり、そのお弟子さんがお茶碗を茶巾で拭いたとたん音もなく茶碗の口が欠けてしまった!
茶室にいたみんなは思わず「アッ」と声をあげた。
私はと言えば心の中で「あ〜ぁ!わっちゃった!」と叫んでいた。
すると「お怪我はございませんでしたか?」と先生がお弟子さんに駆け寄った。
若い弟子は「すみません!」と言って泣き出した。
何と言っても名物と言われる由緒ある茶碗だったのだから・・・
「陶器は割れる物。それよりお怪我がなくて良かったわ」と先生はそうおっしゃって割れ茶碗をさっさと片づけて、代え茶碗を持っていらっしゃった。
う〜ん。少し時が経てばそいう返答もあり得ただろうけれど、間髪を入れずに「お怪我はありませんでしたか?」と弟子の身を案じたとはさすがに師匠だと思った。
何かと難しい師匠だったけれど、さすがに人間の出来が違うと思った。
さて、話を戻そう。
陶器を火にかけて割ってしまった人に私は「お怪我はなさらなかったですか?」と咄嗟に言えただろうか?
う〜ん。やっぱり言えないわ。
心の中で
「ナンタルチア、惨たるちあ!」と叫ぶのが私!
器を割って知る、人の「器」の話。
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