竜也語り

2004年11月13日(土) 「新選組!」第32・33話

●第32話「山南脱走」

自分が江戸へ行っている間に隊士の切腹処分が勝手に行われていた事を知り歳三を殴りつける勇。総司でもオレで法度を犯せば切腹させるのかと歳三に哀しげに詰め寄るが歳三の気持ちは揺るがない。
そんな中伊東甲子太郎が江戸から入隊して来た。早速幹部の会合に参加し、屯所の場を西本願寺へ移動する歳三の提案に1も2もなく賛成する。山南はこの提案に難色を示すが、伊東の弁に打ち負かされてしまった。伊東は更に歳三に山南の欠点を知ったかぶった口ぶりで話すが、「山南の悪口は言って欲しくない」と歳三につれなくされる。歳三は総司にも「山南に隊を離れられては困る」と照れ笑いを浮かべながら自分の本意を話している。歳三は実は山南を信頼しているのだ。昔からの仲間という思いがあるのだ。この歳三の気持ちを山南は気付いていただろうか…?どんなに悪態を吐かれてもいい。相手の心底に自分を信頼してくれている何かが見えればそんなことは許せるものだ。
しかし山南には伝わらなかったようだ。歳三の性分と不器用さも災いしたのかも知れない。総司と話をしている時の、鼻をこすりちょっと照れたような歳三の笑顔を山南が見ていたら…頭のいい山南のことだ、きっと歳三のことを理解出来たであろう。…どうして人間はこうもすれ違うのだろう…残念でならない。

おまけに自分がかっている坂本が失意で酒に逃げている姿を見たことも手伝って、山南は江戸へ一時帰ることを決意する。これは脱走を意味するものだ。山南も十分に理解しているはずだ。しかし一度心が離れ始めると、その思いはもうどうにも止められなくなるものだ。それでも勇に「あなたの取る道はちゃんとあなた自身が決めるべきだ」と遺言とも取れる言葉を残した。
夜こっそりと屯所を抜け出す山南。途中斎藤に見つかるが「人のことには関心がない」と言う彼の性分に助けられ無事に抜け出す。しかしこの時1人稽古をしている総司にだけは思わず声を掛けてしまう。もちろん脱走することなどおくびにも出さなかったが…。弟のように可愛がっていた総司のことが心配だったのか…と言うよりは兎に角総司のことが好きだったのだろう。そんな山南の姿が愛しかった。

翌朝山南の脱走が判明する。苦しい選択を迫られる勇と歳三。山南追跡の任務を斎藤から結局総司に指名を変えた。何を持って総司を指名したのだろうか…?歳三のやさしさだったのだろうか…?

□32話の総司□
随分と大人になった総司であるが、それでもまだ無邪気なところは残っている。屯所移動の会合の時、伊東と山南の争いに「山南さんの負け」などと単純な反応をしていた(汗)。水面下の互いの思惑など全く気が付いてないようだ…。

一方、ひでとの関係には展開が見えた。ひでが医者の所へ行く自分をつけていたと知り、「何でそんなことをするんだよ!」と怒鳴りつける総司。そんなにひでを怒るでないよ。つけられたことに腹が立つのは分るが、自分がひでに何も話さないからこういうことになるのだ。話してあげさえすればいいのだ。
つけられて覚悟を決めたのだろう「そんなに長生き出来ないと思うよ…」とやっと打ち明けた。勇や歳三のためにもっと働きたい、剣術をもっと磨きたいと今の自分の気持ちを告白した。その中にひでに対する気持ちは話さなかったが…。

「だからもう私には関わらないで下さい。」…もっと早く伝えるべきだったのだ。本当に自分がひでと関わらないと決意をしたのなら…。ひでに言及される前に自分からちゃんと話をするべきなのだ。それが本当の相手に対する思いやりだと私は思う。
泣きながら去って行くひで、振り返らず耐えている総司…どちらも不憫だった。

しかしひでのことを思う間もなく山南の脱走のことを聞かされる総司。山南探索を命じられる総司の顔は、もうひでのことを引きずっていなかった。

***第32話の私のつぼ***
藤原総司
・剣術の稽古をしている時の張りのある男らしい声! 
・山南追跡を命じられるその時のほんの少し前、何かを覚ったような表情で(勇だったかな、歳三だったかな)、兎に角どちらかを見た時の表情…美しかった〜。
番外
・実は馬上の総司を楽しみにしていたのだが、そんなことはすっかり忘れ物語に入り込んでいた自分。終わってみれば“馬上の総司”を流して見てしまっていた自分!


第33話「友の死」

山南追跡の命を何故勇が総司に下したか、その本意がはっきりした。山南を逃がしてやりたかったのだ。「草津から道が二手に分かれるので、草津まで行って見つからなければ深追いはするな。」
とりあえず山南を追跡した形をとらなければ体裁が整わない。「ゆっくり行け」と言う含みを持っているのだ。やっと合点したように笑顔を見せる総司。馬を走らせるのではなく、歩かせていた。

一方山南は明里と旅の途中だ。最初「草津まで急がなければならない。」と明里に話していたが、出来るものならそのまま逃げ通そうという気持ちが一縷でもあったのだろうか…?しかし旅を楽しみたい明里におされ、のんびりしているうちに総司に追いつかれてしまう。総司の姿を見つけ自ら総司の前に出て行った山南は、もうそこで自分の運命を受け入れてしまったようだった。

大津の宿で一晩過ごす山南と総司。なぜ逃げたのかと尋ねる総司に山南は「疲れた」と答える。皆疲れているのは一緒だと総司はむくれるが、総司は山南の「疲れた」と言う言葉の意味を理解していない。山南が疲れたのは身体ではない。心が疲れてしまったのだ。志が萎えてしまったのかも知れない。

次の日山南と総司は京都へ戻る。勇はどうして逃げなかったのかと詰め寄る。苦渋の表情の勇と穏やかな笑みを見せる山南の2人の表情が余りにも違っていて…それがやるせなかった。

永倉、原田を始めとする隊士達は何とか山南を脱走させようと画策する。あの歳三までもがその片棒を担いだが、山南はそれを悉く拒否する。もう山南の頭の中には武士らしく最後を迎えることしかないようだった。昔の武士達の「死」に対する考え方は現代の私達の理解を超えてしまっている。彼らは常に「死」を意識し、死に様を飾ることを「生」の目的にさえしているように思えてしまう。

山南の切腹の時は刻々と近づいてくる。介錯を総司に願い出る山南。
「試衛館で一番最初に試合をしたのがアレだった。」…あの時の光景が思い出され、この時はまともに見ていられなかった。
最後の最後にもう一度明里と対面する。季節はずれの菜の花を見せ、嬉しそうに笑っている明里。このまま山南の切腹を知らずに丹波へ帰り、そのまま彼を待ち続けるのかと少し彼女が不憫に思えたが、どうして彼女は気が付いていた。自分が悲しい顔をするとあの人が心配するから騙してやった…。笑顔がみるみるうちに崩れ泣きじゃくる明里。芯の強い、そして頭のいい女だった。

いよいよ切腹の時がきた。静かな表情の山南を哀しそうに見つめる仲間の隊士達。いつもはあまり感情を表に出さない斎藤までが目に涙を溜めている。こんな思いまでして守らなければならない組織とは一体何なのだろうか?
総司の介錯のもと、山南はその生涯を終えた。
もう少し生きていれば…山南のような理論派の人間が活躍出来た時代がやってきたのに…。また1人、時代の波に飲み込まれてしまった。

山南切腹後の勇と歳三の泣きじゃくる姿は忘れられない。特に歳三の子供のように顔を崩して泣いている姿は忘れられない。
竜也くんと同じく、33話は今までの中で一番好きな回となった。

□33話の総司□
ポイントポイントで見せた表情が印象に残っている。
山南を見つけてしまった時のがっかりした顔。階段に座り顔を上げた時の表情(欲を言えば、山南が自分の介錯を望んでいると知った時の総司も描いて欲しかった)。「私の好きな人は皆私の剣で死んでいく…」と言った時の涙声。そして、山南の介錯をするため刀を振り落とした時の目…。

今回の出来事がたとえ総司を成長させるものであっても、余りにも酷すぎた…。

***第33話の私のつぼ***
ラスト。伊東が邪魔くさく出て来て、しらじらしく歌などを詠み、「お辛いでしょう…」と分ったような一言。 だまっとけっ!と思ったと同時に勇が怒鳴ってくれた。…スーッとした。


 < 過去  INDEX  未来 >


ATSUKO  [HOMEPAGE]

My追加