2004年11月18日(木) |
「新選組!」第42・43話 |
●第42話「龍馬暗殺」
新選組は西本願寺から不動堂村に屯所を移した。そんな中慶喜は朝廷に対してあっけなく大政奉還を行ってしまう。所詮薩長や朝廷に政など出来るわけがない、きっと自分に泣きついてくるという甘い読みからのことだった。これで新選組の大義が失われてしまい、歳三は自分達の先行きを心配する。こんな時に理を持って説いてくれる山南や伊東のような人材はもう隊の中には存在しない。新選組は本当に剣客の集まりになってしまったようだ。
一方坂本は大いなる夢に向って相変わらず奔走中だ。帝を頂点に置き、薩摩、長州、土佐の当代をその下に控えさせる。その中心を慶喜にさせるという構想は幕府の永井の心を動かした。坂本の案はこの5者全ての顔が立ち丸く収まるものだ。おまけに戦も回避出来る。しかしどうして人間は権力にこうも執着するのか。坂本の想いは他の者達には通じなかったようである。虎視眈々と坂本抹殺の機会を狙っている。 実際に行動に移したのは見廻り組の佐々木であった。坂本が近江屋に潜伏している情報を薩摩の密告により知る。こういうことだけには団結するのだ(苦笑)。永井から実は坂本が徳川にとって不可欠な人物であると諭された勇は原田と永倉を近江屋に向わせるが、一歩遅かった。 近江屋の佐々木と龍馬の対決シーンは見応えがあった。決して派手な立ち回りではなかったが、俳優としてベテランの域に達しようとしている伊原さんと江口さんの迫真ある目の演技が印象的だった。なにも時代劇は殺陣ばかりが見どころではないのね。静かに声も立てず刀を合わせる二人の顔がとてもリアルだった。
佐々木達が引き上げた後も中岡と坂本は暫く生きていた。「おぬし、どこやられた?」「ワシは頭をやられたから、もう駄目じゃき…」地球儀の方に頭を向け返事をする坂本。果てしない夢を持っていた坂本龍馬。それは決して己の欲望だけに執着した小さなそれではなく、もっと広く深いものだった。あまりの雄大さに他の人間達の理解の粋を超えてしまっていたのだろう。幕末のキラ星が消えてしまった…。
□42話の総司□ 以前からくすぶっていた周平と鍬次郎が剣の試合で決着をつけることになった。総司は井上に頼まれ周平に剣の稽古をつけてやる。なかなか音をあげない周平の熱意に答えるように総司も徹夜で付き合う。 試合は見事に周平の勝利に終わったが、それまでの無理が祟ったのか、勝利の喜びも束の間、総司は大喀血してしまった。この時の竜也くんの演技がかなりリアルであったので、私は恐くなってしまった。もし私の側で誰かがあんな喀血をしたら、ただただ私はおろおろするばかりであろう。肺病などというと何か美しい人が儚く患うような病と、ともすれば勘違いしそうだが(事実物語りの中でもそんな設定が多いように思われる)、この自分の愚かな認識を改めなければならない。
喀血の後口を少し開け昏々と眠り続ける総司。この一件で労咳であることが隊の皆に知られてしまった。特に子供の頃からの総司と関ってきた井上は辛そうだったように見える。しかし一番辛いのは総司当人なわけで…。これから総司は自分の運命とどう向き合っていくのだろう。
***第42話の私のつぼ*** ・佐々木と坂本の対決。特に伊原さんの目つきが凄かった…。 ・「始めっ!」総司の一声。総司は声まで大人になってしまった。 ・私の無知を叱咤したような竜也くんの迫真ある喀血の演技…。
●第43話「決戦、油小路」
伊東は尊壌派志士の会合に参加し自身の理念である“大開国策”なるものを説こうとするが、元新選組であるという理由で岩倉から非常に屈辱的な扱いを受ける。伊東のような人間にとってこれは恐らく初めて受けた屈辱ではなかったのではないか…。伊東はそれでもその建白書を今度は大久保に見せ何とか認めてもらおうと努力するが、大久保は伊東に勇を斬るように命じる。自分が世の表舞台に出るために新選組を利用したつもりの伊東だったが、とんだところでその策が裏目に出てしまった。 例により伊東は策をろうして勇暗殺を企てるが、間者の斎藤によりそれは露呈する。斎藤は御陵衛士を出る時に自分が新選組の間者であることを藤堂にだけ打ち明ける。平助は動揺するがすぐに斎藤に剣を向ける。この時の平助の顔は別人であった。いつものどことなく愛嬌のある表情は消えキリリッと剣者の顔になっていたが、あっけなく斎藤にしてやられたようで…。縄で結わかれ気が付いた時の平助の顔はいつもの平助に戻っていた(汗)。
伊東は新選組への使者として平助を選び勇と2人だけで会いたいと申し入れる。平助は伊東の勇暗殺計画をこの時点では知らない。後になってその事実を知るわけだが、伊東が自分に本心を打ち明けてくれないとその失望は大きかった。篠原が先生は平助のために打ち明けなかった、平助を使者にやったのは昔の仲間との最後の時を過ごさせるためと諭したが、伊東はこんなに人のことを思える人間だったのか…?
勇の妾宅で2人は会った。伊東は勇が油断したところを狙うつもりでいる。自分が馬鹿にしていた新選組の世に与える影響の大きさを見抜けなかった伊東。しかし勇は伊東の意見が通らないのは伊東が新鮮組出身者という理由ではなく、薩長の出身者でないからだと告げる。そうなのかも知れない。百姓出身である勇は生まれのことに関してはさんざんと辛酸をなめてきた。そんな勇が説く理想「生まれは問わず誰でも活躍できる世の中」それに伊東は白旗をあげたようだ。この時勇は伊東の暗殺計画を知っていた。しかし命がけの誠意で伊東にあたった。観念だけでいくら策を練り上げてたとしても所詮それは命をかけてきた人間には敵わないのかも知れない。勇の誠意が伊東の策を上回った。
帰り道晴れ晴れとした表情で月を見上げる伊東の背中を鍬次郎の槍が襲った。嘘のように伊東はあっけなく死んでしまった。平助を始めとする御陵衛士達は伊東の仇討ちに向うがそこで待ち伏せていた新選組と一戦を交える。その時永倉や原田は平助を逃がそうとする。平助も一瞬逃げようかと気持ちが動いたようだったが、御陵衛士の仲間が斬りつけられた姿を見て迷いは吹っ飛んでしまったようだ。新選組隊士を斬りつけ、それは「我は御陵衛士なり」と平助の決意表明のように思えた。とうとう永倉と剣をあわせている背後から他の隊士に斬りつけられてしまった。 乱世の時代は裏切りや寝返りなどということは日常茶飯事であったのだろう。きっと平助のような立場の人間はかなり存在していたのではないか…。どことなく隅に置けなかった平助。はっぱをかけて応援してやりたくなった平助。ありふれた言い方だがいい子だった平助。そんな平助の最期はやはり涙を誘った。勘太郎さんが文字通り命をかけて挑んだような平助の最期だった。
□43話の総司□ 平助が新選組に使者としてやって来た時久しぶりに2人は再開する。お孝のことで冗談を言ったり穏やかに平助と話をしている。この時の総司の笑顔は何故か“聖なる者”のように見えてしまい…変な意味ではないが少し気味が悪かった。
御陵衛士達との決戦の時を知り、病身で寝乱れた髪に、それでもちゃんとダンダラ羽織を着て出陣しようとする総司が健気で可哀想だった。 「あいつが逃げるわけないでしょう。あなた達が思っているほど子供じゃないんだ。」 勇や歳三だってそんなことはもうわかっていると思うよ。子供扱いしているのではないのだ。ただただ平助をそして総司を大切に思っているのだ。止める二人をよそに総司は現場へ向おうとするが、やはりまた喀血…。苦しげな息遣いで「近藤さんが行ってあげないと平助は死にます…」と訴える。その言葉を受けとめ勇は現場へと向った。
もしあの時総司が現場へ駆けつけていたらどうしたのだろう…?平助の決意を敏感に感じ取り平助の意志を汲んでやったに違いない。もしかしたら総司自らの手で平助に決着をつけてやったかも知れない。恐らくそれがあの時代の友情の姿だったのだろう。
***第43話の私のつぼ*** ・中村勘太郎さんの平助。私にとって藤堂平助と言えばもう中村勘太郎さんです…。
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