竜也語り

2004年11月20日(土) 「新選組!」第46・47話

●第46話「東へ」

伏見で惨敗に帰した新選組は勇が待機する大阪へ向う。同じ頃戦で敵方に重症を負わされた佐々木が瀕死の状態で大阪城に運ばれてきた。江戸からの援護を待ち、慶喜の出陣で幕府側の士気を高めるようにと勇に託すが、その慶喜は既に大阪城から脱出してしまっていた。大阪へ向う前歳三は一旦新選組関係の書類の後始末のために京の屯所へ立ち寄った。そして薩長の手にそれらが渡ることを恐れ全て燃やしてしまったが、3年前の新選組がその春を謳歌していた頃の隊名簿だけは懐にそっと忍ばせていた。バツが悪そうにそれを斎藤に見せていた歳三であったが、なにも恥じることはない。未練という思いもあるのだろうが、これから先自分を待っている逆境に対する心の支えになることも確かだ。
しかし長州の手はもう京へ及んでいる。逃げ隠れて脱走の機会を息を殺して窺っている歳三達に八木家の人々が救いの手を差し延べた。彼等の計らいでどうにか京からの脱出に成功した歳三達。八木家の幼い息子が源之丞に尋ねる「あの人達、何か悪いことをしたの?」「悪いことなど何もしていない。」源之丞は答えた。よく考えてみればその通りだと思う。彼等はただ自分達の信念に基づくまま幕府のため、帝のため、そして京の街のために一生懸命働いただけなのだ。しかし何でかこうなってしまった。だから勝負は勝たねばならないのだ。勝ちさえすればただそれだけで全て正当なものとなる。

さて大阪城では勇が永井から慶喜の一件のことを聞かされ愕然とする。隊士達はどうにか勇のもとに帰って来た。勇は松本の勧めもあって海路を渡り江戸へ戻ることを決意する。帰路の途中、街中の通りをダンダラ羽織と着て行進している新選組に対する街の人たちの視線は冷たい。どうやらすっかり新選組は悪者になってしまったようだ。結局京の街を追われた形となって彼等は江戸へ戻った。船上での勇、歳三、総司を始めとする隊士達はそれでも明るいところを見せた。ただ1人、京からの脱出途中で長州の人間に襲われた監察の山崎が静かに息を引き取ったことは除いて…。江戸へ帰って、慶喜のためにもう一度暴れてやる。自分達にまだ活躍の場が残っていると、懸命に希望を抱こうとしていたのかも知れない。しかし当の慶喜は江戸で勝に説得され、隠居する覚悟を決めてしまっていた。

□46話の総司□
相変わらず総司は大阪城で横になっているだけしかない。松本が言っていたように、だった広い病室はけが人で一杯になってしまった。お孝はその人達の世話で大忙しだ。そんなお孝の態度に自分の面倒をみてくれないと松本に愚痴る総司。あらあら、いつもは鬱陶しがっているのに…人間の心理とはまぁ複雑だこと(笑)。

江戸へ帰還する決意を勇が隊士達に表明した時も、何か悔しいげな納得いかない、そんな暗い思いを抱いている隊士達が多い中、「何年ぶりだろ。試衛館、まだ建っているのかな…」と荒んだ皆の心の中に一筋の光を差し込むような言葉を呟いた。船上での総司も明るい。色々な想いがあるはずなのだ本当は。しかしその悔しさも無念さも惨めさも全て飲み込み6年ぶりの江戸へと思いを馳せている。これこそが総司なのだと思う。しかし街中の行進の時、自らの足ではもう歩くこともままならず、車に乗せられ引かれている総司の姿は辛かった。途中ひでが人垣から飛び出して来て久しぶりに2人対面を果たす。ほんの一瞬であったが涙を零さず元気に総司を励ますひで。でも総司のひでを見るまなざしは哀しげだった。本当はひでに自分のあんな弱弱しい姿は見られたくなかったのではないだろうか…?「古い友人だ」とそっけなくお孝に告げたが、それでも名残惜しそうにひでを振り返って見た。あれが今生の別れであった。思い起こせば京での生活においてひでの存在は唯一優しいものであり、総司のわずかな青春らしいものであったように感じる。もしかしたら総司の人生全体においても唯一の青春だったのかも知れない。

***第46話の私のつぼ***
・周斎のマネをする歳三…。でもそれが切なくて…バカ笑いではなく泣き笑いだった…。
・車の上の総司。特にひでとの一瞬の対面で見せた一連の総司の表情。美しくて哀しくて…。
・「ひとたび戦が始まったら、あとは勝つしかないんです。」勝海舟のこの言葉。


●第47話「再会」

慶喜が江戸を去り、官軍を迎え撃とうとする幕府側は新選組に期待をかけるが、江戸を戦火にさらしたくない勝は新選組の名を「甲陽鎮撫隊」と改名させ甲府行きを命じた。新選組は捨て石にされたようだ。勇達を同じように時代を見捨てられた人間がこの時期どれ程いたのだろうか…。勇は勝の本音を悟ったが、勇達に出来ることは甲府で戦うことしか残されていない。そこで勝利し勝の鼻を明かすしか生き残る道はもうないのだ。

甲府へ向う途中、勇達は多摩に立ち寄る。懐かしい顔ぶれは勇達を暖かく歓迎してくれるが、ただ1人お琴だけは歳三に多摩の人達の冷酷な本音を告げる。
多摩で時間をとってしまったため新選組は敵側に先に甲府城を奪われてしまった。背水の陣で挑んだ戦であるが、もう勇達は手も足も出ない。勇は多摩で知り合った菜っ葉隊(?)に援護を頼むよう歳三に向わせたが、歳三のいない間、永倉と勇の間で会津に援護を求める求めないで意見が対立する。話し合いは平行線を辿りとうとう永倉は隊を離脱する。そして永倉と供に原田と数人の隊士もそれに従った。「オレ…あんたに感謝してる」と原田。だったらどうして最後まで勇について行こうとしないのか?結局浪士組以来の仲間は勇と歳三と総司の3人になってしまった。寂しそうに呟く勇に斎藤が熱くなった。「この旗がある限り新選組はなくならない!」と雄雄しく叫ぶ斎藤。これまで一番カッコイイ斎藤の姿だと思った。愛想がよく調子のいいことを言う人間よりも、何を考えているかわからないが無口で無愛想な人間の方が意外と信頼出来るものである。

□47話の総司□
第一線から外れ、江戸でも養生している総司のもとに姉のみつが訪ねて来た。何時ぞや自分が京で出会った隊士達を思い出し「あの人は元気にしてる?」と明るく総司に尋ねるが、殆んどの隊士達はもういない。「あの人ももういません…」と何度も答える総司を見て改めてこれまでの新選組の粛清の過酷さを感じた。
「申し訳ありませんでした…労咳なんかになってしまって…」真面目にみつに詫びる総司の姿にぐっときた。まだ20代の弟に先立たれてしまう姉の気持ちは私は想像出来るつもりだ。病の弟にこんな風に詫びられたら…もうそれは筆舌に尽くし難い思いなのだ。
「京では色んなことがありました……病にかかったことすら私には得ることが多かった。……剣を抜くのが楽しい頃もありました……人の命の重みを知った……だから悔しい。これからなのに。これから本当に近藤先生のお役に立てるのに」総司の成長も頂点に達しようとしているようだ。お願いだからその若さでこんな完成されたことを言わないで欲しい…。どうも人間は与えられた寿命に応じて成長していくらしい。生き急いだような京の5年間だった。

勇達が多摩へ向う時床を抜け出し勇達の前に現れた総司。「以前にもこんな場面があったな」と呟く勇。そうそうあったあった(笑)。まだまだ総司が本当に子供だった頃。三谷さんは心憎い。
さて多摩での総司は楽しそうだった。満面の笑みを浮かべて…しかしこれが総司の最後の幸福な一時になるのであろう。
その夜歳三に稽古をつけると言い出す総司。最初は総司の病を気遣って躊躇していた歳三だが、勇の勧めもあって立ち会った。「かかってきなさい」と落ち着いた声で歳三に向う総司に試衛館の頃の総司の面影は消えていた。

***第47話の私のつぼ***
・洋装の歳三、素敵だった。そしてそれを見た総司の一言…「何だか見てられないんですけど…」
・今になって出てきた島田がつけた偽の大相撲力士の手形。容保も勇達もあの頃は楽しかった…この僅かな笑いの中にもうこの物語が終わりに近づいていることを感じた。
・総司と歳三の最後の稽古。


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