2004年11月21日(日) |
「新選組!」第48・最終話 |
●第48話「流山」
鉄の結束を誇った新選組のメンバー達も皆散り散りになり始めた。永倉は死んだと思った市川と合流。原田は家族の待つ京へ向った。そして総司は1人で江戸で療養中だ。勇と歳三は勝から江戸から立ち去るよう命令され、残った隊士達と供に流山へ向う。しかし流山で駐屯する勇達を怪しんだ新政府軍は薩摩の有馬を探察に向わせた。屯所を隈なく探った有馬だが、捨助の思わぬ機転にも助けられ事は好転したかのように見えた。しかし最後の最後に「誠」の旗が有馬の目に飛び込んできた。この時もう大久保大和と名乗る人物が近藤勇であると気付いたようだが、有馬はあえて勇を大久保大和として扱い勇の真意を尋ねる。帝を利用し幕府を裏切った薩摩のやり方がどうしても許せなかった…正義は我らにあり、と堂々と語る勇に有馬は感服したようだった。これで一件落着のように思われたが、有馬の隊の者に京に在住していた人間がおり、そこでどうしても勇は新政府軍の陣に出頭せねばならなくなってしまった。勇は潔く身分を明かし切腹を選ぼうとするが歳三はそれを許さない。死ぬ気で嘘をつき通し生き延びろと必死に説得する歳三。もう武士の時代は終わったのだ。武士の魂を貫くよりも、ここまで自分を信じてついてきてくれた同志のためにも、そして新選組の名のもとに散っていった同志のためにもここは生きる道を選ぶべきだと思う。そして勇は決意した。大久保大和として生きることを。
新政府軍の厳しい取り調べにも屈しない勇。有り難いことに有馬も勇の味方のようだ。しかし不運にも新政府軍の中にかつて新選組に在籍していた者がいた。加納だ。取調室で対峙する2人。加納は目の前の人物が近藤勇であると暴露することを迷っていたようだった。もうこれまでと思ったのか、加納の気持ちを察したのか…勇は口元に微笑を浮かべ言った。「加納君、お久しぶりです。」この言葉を聞き加納は勇の気持ちを汲んだようだった。「ご無沙汰しております。局長。」と両手をついて深深と頭を下げた。かつては志同じく一緒に戦った…偽りのない同志の姿だった思う。いくつもの別れがあった48話だった。
□48話の総司□ 勇が総司のもとを尋ねてきた。やっとの思いで床から起き上がる総司。メークも凄まじかったが、それよりも痩せ細り…もう病状も末期の様相を呈してきた。自分達が流山へ行くことを報告し、今度また徳川の時代になったら総司の天然理心流5代目の襲名式をやろうと笑顔で話す勇。それを受け嬉しそうに話しに乗っている総司。「いつかやろうね」その“いつか”なんて二度と来ないことをお互い十分分っていてもそんな話をすることが私にもあった。そして決してその日がやって来ないとは決して口には出さないのだ。どうして人間はこんなことをするのだろう…。慰めあっている…と言うのとは少し違うような気がする。やはりそこには一縷の望みとはまた違った前向きな気持ちが存在していると思うのだ。これもどんな状況に陥っても再び立ち上がろうとする…人間の持つそんな強さの1つのような気がするのだ。近藤の後ろ姿を見送った総司。これが師匠との今生の別れになると意識していたのだろうか。
その後に今度は斎藤が尋ねてきた。嬉しい驚きを隠せない総司。かすかに色めいた総司の表情がよかった。「いつ頃死ぬんだ?」と何となく斎藤らしい問い掛けにちょっと驚いたように少し間を置いて「夏の終わりぐらいかな」と答える総司。この2人のシーンが総司の完成を物語っているように感じた。刀の時代の終わるその時期に自分は生まれ、近藤先生に出会いそして新選組に一番隊長として活躍出来た。と語る総司は自分の人生に、周りの人間達に、そしてこの世の全てのことに感謝しているようにだった。最後の最後に感謝出来る人生。これはやはり勝利の人生だと私は思う。 「涼しくなる前にまた来る。」斎藤は笑顔で去って行った。もう会えない…諦めのような覚悟のような表情で見送る総司の顔が印象的だった。
***第48話の私のつぼ*** ・この期に及んで女に色目をつかっている歳三。変わってない(笑) ・アリを何の悪びれもなく潰している総司…。 ・「俺は間違いなく負けていた。」と総司に言った斎藤。この時の斎藤の微笑み。上手かったな。
●最終話「愛しき友よ」 新政府軍に捕われた勇は板橋にその身柄を移され厳しい取調べを受ける。だが勇は自分達に甲州行きを命じた勝の名前を決して口にすることはなかった。有馬はそんな勇に語る「敵方を一時の感情で罰するなんてもってのほか。生きることを恥じてはならない。」私はこんな指導者について行きたいと思った。それでも勇は自分一人で敵方の恨みを一身に受ける覚悟をしているようだったが、豊田家の幼い娘の姿にたまの面影を見たのか、有馬に尽力を求める。 歳三達は勇救出のため奔走するが「土佐、薩長の徳川に対する恨みを勇は全て一人で受ける覚悟をしている。それによって大勢の者達の命が救われる。」と勝に諭され、また勇のそんな気持ちを汲んだのだろう、蝦夷へ渡り最後の幕臣の意地を貫くことを決意する。 有馬に尽力を求めた勇だが事はもう有馬の手におえない事態までになっていた。勇の身元を徳川に照会した新政府軍に対し幕府はそんな人物は自分達とは無関係という立場を取る。こうして勇は切腹ではなく斬首されることになってしまった。新政府軍の名目を保つため犠牲になってもらう…新選組の局長は格好の人物であったように思える。新選組の哀しさはこんなところにもあるように思えた。
土方は多摩の実家の長兄に会いに行く。「何が正しくて間違っていたか…そんなことは百年・二百年先の人間達が決めればいいことだ…」本当にその通りだと思う。人間がその真価を本当に正しく評価されるのは没して何十年も先であることが多い。その人物が正義を貫こうとすればするほど存命中は迫害されるものだ。多くの偉人達がそうであったではないか。 処刑の日、ふでもつねも毅然としていた。そんな時捨助が刑場で一暴れする。せっかく勇が助けようとしたその命…それを捨助は勇のために散らした。勇の気持ちを汲んで勇から敢えて別れ自分の成すべき事をした歳三。最後まで勇に対する自分の思いを貫き勇について行くように死んでいった捨助…。形は違うがどちらも真の友情の姿だと思う。
最後は皮肉にも新選組の隊士達は全く別の場所で迎える。勇と決別した永倉は新しい仲間に勇の正義を訴える。原田は処刑台に向う勇に「新選組は不滅だ!」と檄を飛ばした。斎藤は京へ勇の首を奪回するために向かい、歳三と島田はまだ戦地で戦っている。そして総司は江戸で療養中…皆ばらばらでも己の成すべきことを果たしているようだった。 処刑台で静かに頭を下げる勇。最後の言葉は父でも母でも妻でも娘の名前でもなかった。「トシ…」無二の同志の名前を呟き、そして勇は刑場の露と消えた。
□最終話の総司□ 歳三が総司に会いに来た。「皆一緒ですか?」新選組の状況を気にかける総司に、一緒だと歳三は嘘をついた。そんな歳三の下手な嘘を見破った総司のようだが、皆さんによろしくと、その嘘に乗った。「元気でな。」歳三は微笑みながら去って行く。穏やかな表情でそれを見送る総司。また同志との別れだ。これが今生の別れであることはもう二人とも百も承知であるように思えた。私はあんなに強くなれるだろうか。笑顔で別れを告げることが出来るだろうか…。「皆私に会いに来る。別れを言いに。たぶんもう皆一緒じゃないんだ…」総司はどんな思いでこの言葉を口にしたのか。
歳三が総司に教えてやったお孝の大きな前歯。ある時総司自身もそれに気が付き、お孝の前歯を「本当だぁ…かわいい…」と顔を近づけまじまじと見つめ「見せて、見せて〜」と恥ずかしがるお孝を子供の追いかけっこのように追いかける総司。私…このシーン、悲しかったです。お茶目な総司の姿…これが本当に最後だと直感したからだ。 その通りになった。恐らく長州の者達だろう。今更総司を襲いにやって来た。しかし総司の刀はない。まだ剣術の稽古をする総司の身体を気遣ってお孝が植木屋に預けてしまっていたからだ。「お孝逃げろ!」と総司は叫ぶが、お孝は逃げなかった。そればかりか賊の前に仁王立ちになり「この人は一人で、それも病人です。そんな人に何人もよってたかって掛かって来ては男がすたりますよ!」と啖呵を切った。そんな健気なお孝を賊は容赦なく斬りつけ、お孝はあっけなく死んでしまった。植木屋が総司に刀を渡し、一瞬にして総司は相手を次々と斬り倒していく。病身でもまだ剣の腕は衰えていないようだ。しかしこれも総司の最後の雄姿となった。この後すぐ大喀血し、庭に倒れこむ。
勇の処刑の日、総司は床にふしていた。自分の成すべきことは静かにその死を待つことしかない…そんな弱弱しい咳だった。庭や部屋のあちこちに吐血した血が水溜りのようになっている。その血の溜りの中で蟻が一匹もがいていた。そっとそれをつかみ、お孝の供養のつもりだったのだろうか…そのアリを逃がしてやった総司。 姉のみつは江戸にはいなかった。尋ねて来る仲間もいない。そして世話をしてくれるお孝ももういない…。薄暗い部屋で、総司は…ただ一人だった。
***最終話の私のつぼ*** ・「人間どう死んだがじゃねぇ。どう生きたかだ。」勝のこの言葉のように自分の信じた道を精一杯生きた隊士達。私もそうでありたい。「新選組!」に感謝!
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