物事が予想以上に上手く運びある程度成功を収めると人間どうしても天狗になる。「いい気になるなよ」と自分で自分に言い聞かせてはみてもこれがなかなか難しい。背中につっかえ棒を当てた方がいいのではないか?と皮肉りたくなる程そっくり返って歩いている人間も実際に私は知っている(笑)。まぁそんな人間にしてしまうのはおっべかを使う周りの人間達にも責任の一端はあると思うが…。
さて天狗になるのは何も人間だけではないようだ。去年の暮れ辺りから我が家の近所に何処からかノラ猫が1匹迷い込んできた。トラとブチが混じったような雑種の本当に痩せこけた猫だった。我が家の近所は比較的生き物好きの人が多く、ノラ猫などには積極的に餌を与える人達だ。中には雨の日などわざわざ自分の家に連れて行き雨宿りをさせてあげている人もいる。なのでもちろんその猫がやって来た時も誰となく餌をあげていた。 その内皆その猫を「ブー」と呼ぶようになった。顔がブスだったからだ(笑)。最初の内はブーもひもじかったのであろう、何とかゴマをすって餌を貰おうとスリスリゴロゴロ自分の体を擦り付けてきた。とても人懐こく「ブ〜♪」と名前を呼べば飛んで来たし、頭を撫でてやればそれは嬉しそうにしていた。だんだん体も肥えてきて顔つきも可愛くなってきたので、おっ上手くいけばこれは何処かのご近所さんにもらわれていくかも知れないなと思っていた近頃、ちょっとブーの態度に変化が見えてきたのだ。近所のおばちゃんや母の説明によると、こちらが頭を撫でたり抱こうとすると「フワーッ!」と怒ると言うのだ。そのくせ餌が欲しい時には例のごとくスリスリしているらしい(笑)。どうも迷い込んで来た当時のひもじさが解消し、おまけに人間達もわりと可愛がってくれるので少しいい気になっているようだ(苦笑)。
構うと怒ると聞いているので私も最近はブーを見かけても手を出さない。時折目があうとブーは憎体な面構えで私を見ている。少し腹が立つので側まで行き「天狗になってるんじゃないよ。そんなことしているとその内痛い目にあうんだからね。」と言い聞かせてやった。「うるせー」と言わんばかりにブーは立ち上がり、つんと尻尾を立てて足取りも軽やかにその場を去った。フリフリと優美に動くお尻は「ちやほやする周りの人間が悪いんだろう?」と言っているようだった(笑)。
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