『野のユリ』Lilies of the Field 1963年 ラルフ・ネルソン監督
NHK-BSで録画したのを見る。
黒人男性が主人公を演じていることにまず驚いた。
それも差別などの要素が全く絡まないハートウォーミングな物語である。
近年になってさえ黒人差別の話を見聞きするくらいなのに
1963年当時の情勢は想像に難くない。
アメリカ社会は振り幅の大きい国なのだなあと思いながら見る。
後から検索すると、主人公を演じていた黒人男性はドニー・ポワチエという
俳優さんで、この作品でアカデミー主演男優賞を受賞したということだった。
複雑な社会背景を背負いながらも、黒人スター俳優として黒人俳優の
地位を向上させた功績は大きいとあった。
作品の社会的意義を心底実感出来たら見方や感じ方も
多少違ってくるのかもしれないが、正直黒人差別についてよくわからないので
(日本人にとって異文化圏についての差別意識の実感は薄いと思う。)
だから作品に対して感じたことは、よく言えば先入観なく感じたことだ。
物語の在り方や、登場人物の設定などすごく魅力的だと思った。
だけどあまりにも品行方正過ぎるというか堅い。
なぜこうも息が詰まる思いになってしまうのか理由を考えるに
セクシュアルな匂いが全くしないことが一因ではないかと思った。
別にメイクラブの存在を言ってるんじゃない。
作品には醸し出す色香というものがあると思う。
作品から色気を感じないことが、琴線に触れそうで触れない原因かと思う。
細かいことを言えば、古株の修道女のキャラクターが
偉そうにしている人にしか見えなかったのが口惜しい。
修道女の語気強い言葉とは裏腹に
ジーンと胸に響くキャラクターを感じさせてほしかった。
頭の中で(『テルマ&ルイーズ』くらいのトーンを意識して)
場面を翻訳しながら見る。
もう少しエンターテイメントの要素で色づけしたら
すごく面白くなるだろうなあと思いながら。
佳作の映画には違いない。
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