おうち鑑賞

2010年10月13日(水) 『野のユリ』


『野のユリ』Lilies of the Field 1963年 ラルフ・ネルソン監督


NHK-BSで録画したのを見る。

黒人男性が主人公を演じていることにまず驚いた。

それも差別などの要素が全く絡まないハートウォーミングな物語である。

近年になってさえ黒人差別の話を見聞きするくらいなのに

1963年当時の情勢は想像に難くない。

アメリカ社会は振り幅の大きい国なのだなあと思いながら見る。

後から検索すると、主人公を演じていた黒人男性はドニー・ポワチエという

俳優さんで、この作品でアカデミー主演男優賞を受賞したということだった。

複雑な社会背景を背負いながらも、黒人スター俳優として黒人俳優の

地位を向上させた功績は大きいとあった。

作品の社会的意義を心底実感出来たら見方や感じ方も

多少違ってくるのかもしれないが、正直黒人差別についてよくわからないので

(日本人にとって異文化圏についての差別意識の実感は薄いと思う。)

だから作品に対して感じたことは、よく言えば先入観なく感じたことだ。



物語の在り方や、登場人物の設定などすごく魅力的だと思った。

だけどあまりにも品行方正過ぎるというか堅い。

なぜこうも息が詰まる思いになってしまうのか理由を考えるに

セクシュアルな匂いが全くしないことが一因ではないかと思った。

別にメイクラブの存在を言ってるんじゃない。

作品には醸し出す色香というものがあると思う。

作品から色気を感じないことが、琴線に触れそうで触れない原因かと思う。

細かいことを言えば、古株の修道女のキャラクターが

偉そうにしている人にしか見えなかったのが口惜しい。

修道女の語気強い言葉とは裏腹に

ジーンと胸に響くキャラクターを感じさせてほしかった。

頭の中で(『テルマ&ルイーズ』くらいのトーンを意識して)

場面を翻訳しながら見る。

もう少しエンターテイメントの要素で色づけしたら

すごく面白くなるだろうなあと思いながら。

佳作の映画には違いない。








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Barbara [MAIL] [バイオトープの庭]

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