| 2006年02月12日(日) |
アカイヌクモリ ―――�供檻魁宗宗� |
僕らのひとつ上の学年の奴らは健全というか、トミナガの言う通りクソ真面目というか、反れた道を歩いているような奴が一人もいなかった。鬱病患者の集まりのようだ、と思いながら見ていたほどだ。 「今年卒業していったセラダたちは、入学した時から数々の問題を起こしていて、好き勝手なことばかりしていた。私たち教師も何もできない荒れようだった。そして、セラダたちが二年になって今の三年生が入学してきた時だ。一人、問題児というか、まあ、君たちみたいに先輩や職員に盾突くような生徒がいた。名前は伏せておく、Aとしよう。Aは入学して早々、激しくセラダの仲間と揉め合っているようだった。セラダは二年に上がる頃から学校へはあまり来なくなっていた。そんな揉め合いが続いていた、確か六月初旬くらいだった。Aの保護者から学校に、『うちの子が昨日から帰って来ないんです』という連絡が入った。私たち職員は全員で市内をさがし回った。そして、やっとの思いでAを発見した。Aはここから少し離れた線路沿いで、顔を血まみれにして倒れていた。学蘭もボロボロで、息も苦しそうだった。即刻Aを病院へ連れて行き、幸い命に別状はなかったものの、体内には覚醒剤が打ち込まれていた……」 「警察は動かなかったのか?」 サジが相槌を打った。 「──当然、Aの保護者は警察に連絡しようとした。しかし、私たちはそれを必死で拒んだ。わかるだろう、セラダたちを敵に回したら我々職員の命も危なかったんだ。──それから、Aは無事に退院したものの、凄まじい暴行を受け覚醒剤を打たれたショックで、数日後、自室で首を吊った──。無力な私たちにAの保護者は、絶対に許さない、うちの子を返せ、と泣いて学校に押しかけてきた。そんな保護者にただ私たちは、申しわけございません。無力な私たちをお許し下さい、と頭を下げるしかなかった……。暴行を加えた犯人はセラダたちだと初めからわかっていた。それでも私たちは知らないふりをし続けた。Aよりも……自分たちの命の方が大切だった──。後悔している。たった一人の生徒すら助けられなかった自分に──」 「ヤクを打たれても警察は出なかったのか?」 ヒロトが頬杖をつきながら訊いた。トミナガは今にも泣きそうな顔だった。 「情けないが……学校と事件は一切関係のないことだと、しらをきり続けた。そして、事件が迷宮入りすることを望んだ──」 トミナガは後悔の念を頭を掻き毟ることにぶつけた。 「最低だ、お前らが死ねばよかったんだ」 シンジが冷めたように言った。そして、�犹爐佑个茲�ったんだ�瓩箸いΕ轡鵐犬慮斥佞�頭の中で何度もこだましていた時、サジが平然と言った。 「へー大変だったね、そりゃ。Aって奴には同情はするけど、自業自得とも言える──いや、言いすぎか。でも、とりあえずセラダは大したことねえし、あんな奴にビビるお前ら教師の気が知れねえ。それに、セラダたちが原因で自殺をするAの気持ちもな。それより、Aの話をしてくれた御礼に、お前にひとつ話をしてやろうか?俺が教師を気嫌いするわけを」 トミナガは一瞬躊躇したようだったけど、ゆっくり頷いてサジの顔を見た。僕らもサジの話しに体ごと傾けて聞き入った。 「それはな、物わかりの悪さと理屈っぽさ、それに固定観念の強さだ。まあ、それがお前に当てはまるかどうかは、その知性豊かな頭と、人間性溢れる心で考えてくれ」 シンプルな言葉だったけど重みがあった。�狠寮�豊かな�瓩筬狄祐崟�溢れる�瓩箸いΩ斥佞漏愬�集会の時、トミナガが頻りに言っていたことだった。トミナガは教師としての自分に何か思い当たる節があったのか、疲れきったように深く考え込んでいた。 「それじゃ、約束だからな。戻るか?」 サジはそう言いながら立ち上がると、僕ら全員の顔を見て、行くぞ、と促した。 僕らが一斉に生徒指導室から出ようとすると、 「まだ授業は終わっていないんだ。ちゃんと教室へ戻るように」 トミナガの気の抜けた声を背中に受けた。そして、返事をしないで出て行こうとする僕らにもう一度繰り返し言った。命令されているような気がして、一瞬頭に血が上った僕は脂の浮いたトミナガの頬を掴んだ。 「指図するな。──ドゥーユーアンダースタンド?」 日常的な英会話を日頃心がけている英語担当のトミナガがこの状況でどんな答え方をするのか、僕は興味深かった。 「──は、はいぃ……」 吐息のように小さく日本語で返したトミナガに、僕はおかしさで顔を真っ赤にして生徒指導室を出た。 「発音悪すぎ」 ドアを閉めた途端、遅れて退室した僕を一人待っていたリョーキにあっさりと指摘された。恥ずかしさを紛らわせるために、うるせー、とケツに蹴りを入れた。そして、トミナガのことを伝えた。 「あいつ、何て答えたと思う?」 リョーキは軽く首を曲げた。 「はいぃ……、だってよ。いつものあいつらしくねえだろ?その場で吹き出しそうになった」 声を出さずに、リョーキは口元だけに微笑みをつくり正面を見つめていた。
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