| 2006年03月14日(火) |
アカイヌクモリ ―――�察檻掘宗� |
仕切り直された会合はリラックスしたものになっていた。初めに淹れられたコーヒーには重苦しい空気からか、誰一人として口をつけようとはしなかったけど、淹れ直されてからはそれをすする音と煙草の煙が静粛だった客間の空気を変えていた。 「──あのぉ、シドのために……こうしたいとか、たとえばどっかに連れて行ってあげたいとか、そういうこと、何でもいいからもしあったら言って」 小さな声でカオリは四人にそう言った。そして、しばらく考えてからキリッとした目を僕とカオリに向けてサジが答えた。 「俺たちがシドにしてあげることは……元気だった頃と──今でも中身は元気だと思うんですけど──同じ接し方をすることです.同情とか病人扱いは絶対にごめんだと思うんで、こいつは。それと、どうにか犯人を捕まえることですね。身体も俺たちがやってどうにか治るもんならしてやりたいですけど、現実的に考えても無理なことなんで、身体の原因解明と回復の方は医者に託して、俺たちはさっきマユミさんが言ったように奇跡っていうのを信じようと思います」 「ねえサジ──」 テーブルに頬杖をついて母親は言った。 「あんたの犯人を捕まえたいっって気持ちはわかるけど、シド以外、誰も犯人の顔を見てないのよ。警察だって全く足どりが掴めないんだし……」 「見てますよ、絶対に──」 サジは確固たる自信を顔に浮かべながら続けた。 「──事件直後、救急車が到着するまで、家の前にはかなりのヤジウマがいたらしいですね?」 母親は無言で頷いた。僕の隣では親父とカオリも身を乗り出して聞き入っていた。 「そのほとんどはこの近所の住民で、当然警察も事情聴取に出たと思うんです。でも、それから全員を勝手口の前に集めて一人一人シドをどこから見てたのかっていう検証をやってないんじゃないんですか?」 「……そういえば、やってねえな。調査の報告は毎回のようにしてくるけど、それはなかったな」 親父は首を傾げながらそう答えた。 「警察は自分たちが足どりを掴めないから、そこまで動こうっていう頭が回らないんです。いい加減だと思いませんか?だからそれを俺たちでやろうと思うんです。──市内の連続空巣で、この家は九件目のターゲットになりました。でも思わぬ事態でもしかしたら殺人罪もプラスされるかもしれない……。犯人は絶対にヤジウマの中に紛れてシドが生きているかどうかを見に戻ってきたと思います。少し話がそれますけど、放火魔のほとんどは自分の火をつけた建物が燃えているのを見に戻ってくるって、テレビで評論家が言ってました。もちろん断言はできませんよ。──それと、検問も一緒にやるつもりです。もうずいぶん経っちゃいましたけど、この辺でまだうろついてる可能性が全くないとは言えません。とりあえず家の前と、もう一本奥の道を。時間は日づけが変わるちょっと前から明け方までって考えてます。ただ、検問に限っては一ヶ月できり上げようと──。多分、続けていくうちに一台も通らなくなると思うんで。──警察はプライバシーとか人権で、ある程度食い込んでアリバイのない奴ならそれ以上は入っていきません。でも俺たちは警察じゃないんで、そんなことは関係なしでやります。これは四人でずっと考えてたことなんです。もう少し練ろうかと思ってたんですけど、今日の話を聞いてもう考えてる時間はないなって……。絶対に捕まえてみせます」 「なかなか読みの鋭いガキだな。──俺は?」 親父は煙草に火をつけた。サジはその動作を目で追いながら答えた。 「シドの傍にいてあげてください」 「……わかった。でもいいか、くれぐれも方向性を間違えねえようにな。それと、必要な時はいつでも──」 サジは口を固く結んで頷いた。 「何か素人のやる臭い芝居みたいだけど……」 母親が親父とサジを交互に見ながら続けた。 「みんなありがとう。本当に気をつけてね、頼んだよ。──それとさ、ヒトミちゃんにも今日のことを……ね。また鬱になったりしちゃうかもしれないけど……」 「伝えておきます。あいつのことは俺たちとリョウコでなんとか。──だから心配すんなよ、シド」
�爐△◆⇒蠅鵑世将�
|