| 2006年03月15日(水) |
アカイヌクモリ ―――�次檻院宗� |
余命宣告を受けた翌日から、四人は検問と近所への聞き込みを始めた。�狎簑个吠瓩泙┐討澆擦泙広瓠△伴�信に満ち溢れてサジは断言したけど、世間は十四のガキがすんなりと犯人像を掴めるほど甘くはなかった。ましてあのオッサンを捕まえることなど……。そして、検問開始九日目の明け方に恐れていたことが起こってしまった。 一月の真っ暗な空が深みを帯びたグレーへ変わる頃になると、睡魔と疲労でブレイカーを落とされた電気みたいに言葉も動きもなくなるんだ、と僕は仲間から聞かされていた。車の通りもなくなり、空の色を見てからいつものように引き上げようとした時だった。 激しいエンジン音と共に車高をギリギリまで下げたセダンが猛スピードで四人へ向けて走ってきた。そして、放っておいて帰りたいという気持ちがありながらも義務的に四人は道を塞いで車を停めた。 「轢き殺されてえのかテメーら!」 二十歳前後の男に激しく怒鳴り散らされても逆上する気力も残っていなかった四人は、検問をしているということと、その理由を告げて協力を求めた。すごく眠そうな声で……。 「大変だな。でも俺も眠いんだ。ガキのくだらねえ夜遊びにはつき合う気はねえ……。道をどけろ!」 全員が深い溜息を吐いて、どうしようか?と考えていた時だった。 「仲間の命がかかってんだよ!ふざけてんじゃねえぞこのヤロー!」 男の胸倉を掴んで眠気が覚めるほど感情の籠もった怒号を上げたのは──シンジだった。男は窓枠から腰が出るほど引っ張られ、三人は呆然とその様子を見ていた──。 �牋貊屬世辰燭鵑澄帖牒瓮汽犬呂修Ω世辰拭� �牋豕い砲い蹐鵑焚擦�して、それから先は記憶が飛んでる……�瓮轡鵐犬麓鵑魴垢欧襪个�りだった。 タイヤが空回りし擦れる甲高い音と、唸るようなエンジン音が零下の空気を揺らした瞬間、シンジの体が宙を泳ぐように仲間の元から離れていった。アスファルトに足をつけたまま──。叫び声も何もなかった。ただシンジの体が踊る人形のように三人には見えた。 三〇メートルほど引きずられ、シンジの体は地面に叩きつけられるように解放された。男の乗った車は遠くでブレーキランプを光らせていたけど、三人は全く動かないシンジにこれ以上にないダッシュで駆け寄った。この時には眠気も疲労も頭にはなかった。苦しそうに顔をしかめているシンジの足下に三人は恐る恐る目を向けると、キャンバススニーカーは激しい摩擦によって破られ、甲の骨が肉眼で見えてしまうほど痛めつけられていた。シンジの足は誰もが目を背けたくなるほど酷いものだった。そして、サジが怒りで目を泳がせながら遠くのブレーキランプを睨みつけていると、車がさっきまでとは違うおかしな唸り声を上げながら磁力に引きつけられるように四人の元へ引き返してきた。それから男はゆっくりとドアを開けた。 「す、すまん。──おい、だ、大丈夫か?でもお前らがあんな……」 「わざわざ戻って車から降りるなんてずいぶんとまあ、良心的じゃねえか。轢き逃げ犯らしからぬ行動だ。でもな……もうおせえよ」 サジは半開きのドアの前に唖然と立ち尽くしている男の顎を掴み、そのまま鳩尾に一発拳を入れるとリョーキとヒロトを無言で手招きした。この一発で、男はようやく自分の立たされている状況を把握したらしく、息のできない苦しさの表情は恐怖一色へと変わったという。 男が選択した�犲屬�ら降りる�瓩箸い�行動はひき逃げをしてしまったにしろ選んではいけないものだった。おとなしく警察に出頭した方が利口だったかもしれない。けど無理もない。シンジとは違い平和主義者とはほど遠い三人がどういう人間か、この後自分にどういう仕打ちをしてくるのか、男は知るよしもなかったのだから。もしかしたら十四歳という年齢に多少なりとも無防備な気持ちがあったのかもしれない。 三人は一斉に男を囲みながら力任せに殴りかかった。まるで僕をやった犯人への怒りをぶつけているかのように。男の体がフラフラになりアスフャルトに何度も倒れ込みそうになっても、そうはさせぬと三人は制裁を加え続けた。胆汁を垂らす腫れあがった男の顔からは脂汗、鮮血がとめどなく流れていた。そして、肝臓に的を絞っていたリョーキが締めの一発を浴びせようと腰を入れた時だった。 「……よせ!」 苦しそうに横たわるシンジが擦り剥けた顔を上げた。 「もうやめろ……。それ以上やったらそいつ死ぬぞ。──今だってほとんど意識が……!。それに俺たちだって……これから──」 「おい、喋れるか?」 サジは一瞬シンジに目を落としてから男の胸倉を掴んで揺すった。──反応がない。 「運転はできるか?」 ──微かに頷く。 「なら、さっさと消えろ……」 男は何も言わずに倒れ込むように運転席に座ると、目も開けられないほどのダメージの中、法定速度を遥かに下回り蛇行しながら、弱々しい唸り声を上げる車と共に消えていった。 結局シンジは両足合わせて十三針も縫う大ケガを負った。医者から原因を執拗に追究されながらもうまくきり抜けた。そして、驚くべきことにまともに歩くこともできないはずの足を引きずりながら何事もなかったように翌日から検問に立った。しばらくおとなしくしてろ、という仲間の声や、もう警察に任せて、と泣き叫ぶ恋人リョウコの声を押しきって──。 けど、そんなシンジを始め仲間の気持ちに神(信憑性はないし信じないけど)は微笑もうともしなかった。 四人が懸命になればなるほど、検問も聴取も困難になっていき、それが原因で湧き上がる焦りや苛立ちから、言い争いが日を追うごとに激しくなっていた。時には僕の前でとっ組み合いになったこともあった。四人は口にはしなかったものの、改めて事件の手がかりがないことを痛感し、頭を抱え込む毎日を過ごしていた。 そんなある日、僕の前にどことなく元気のない様子で現われたヒロトはこんなことを言った。 「俺の医学知識が、お前の身体の衰弱に追いつけねえんだ。追いつこうと思えば思うほど空回りして距離が広がっていく。──俺は、お前を助けることができないかもしれない……。だからその時は、俺を道連れにするなり好きなようにしてくれ」 帰り際、ヒロトは玄関で何度も激しい咳払いをした。──それが、僕には嗚咽交じりに聞こえて仕方がなかった。 そんなヒロトの困惑した様子をただ黙って見ているうちに、僕自身、オッサンが捕まるも、事件が迷宮入りするも、もうどうでもいいと思い始めていた。不可能に限りなく近いことでもなんとしても捕まえるという仲間の気持ち、執念……それだけで十分だった。僕はまたひとつ、仲間から生きるべきことの意味を教えてもらった気がする。また、その仲間がどれほど僕にとってかけがえのないものかということも──。そして、何の手がかりも得られないまま無情にも時は過ぎ、四人は受験生という名の下で戸惑いながらも、自らの道をきり開いていた。 秀才のシンジとリョーキは、お互い別の高校を選んだ。各中学のトップクラスが、寝る間も惜しんで猛勉強し、やっと入れるような名門と呼ばれる所に。ヒロトは、あの懐かしき思い出の第三高校へ。 「あいつらは学生っていう世界でテメーのやるべきことをこれから見つけるって。そんで俺は、あいつらにはまだ見ることのできない社会っていう世界で金を稼ぎながら、俺にしかできない飯の種を探す」 サジは僕の前で学生生活を終え、三人よりも一足早く社会人として生きていくことを告げた。 三年になってから、英語に携わった仕事をしたい、と言っていたリョウコは、姉妹校がイギリスにある、留学志願者には持ってこいの高校が決まっていた。またシンジとの関係は、多少のデートと多少のキス、時には激しい言い合いとよく意味のわからない報告だったけど順調のようだった。 そして、ヒトミは市内の女子高へ進学することが仲間の口から伝えられた。僕の余命を聞いた時、彼女は一瞬にして表情がなくなり、定まらぬ視点でうなだれながらリョウコの肩に顔を埋めて静かに泣いたという。精神状態が安定を保っていた時に告げられた�猴礁伸瓩箸いΩ斥佞如▲劵肇澆郎討嘶犠�態に陥ってしまい、それを毎日目の当たりにしていた仲間とリョウコは、もうどうすることもできない、と申しわけなさそうに言った。──けどそれは僕にとって、ヒトミに対するどんな同情の言葉よりも求めていた言葉だったのかもしえない。 確かにヒトミのことを忘れる日はない。不安、心配もつきものだ。足音が聞こえれば何より先に浮かんでくるのは当然彼女の顔だ。それ以外何もない──愛してるから。だからこそ僕は全ての選択肢をヒトミに委ねることにした。たとえ鬱になったとしても会うべき時がくれば必ず彼女は僕の前に現われる。──仮に、世界中の人間が束になって僕と会うことを説得したとしても、ヒトミの気持ちを揺るがすことはできないに違いない。僕は息絶える寸前まで、この椅子の上でヒトミを信じて、影もぬくもりもないけど小さくて白いあの柔らかい手をしっかりと握り締めながら�爐修了��瓩鯊圓疎海韻茲Δ隼廚Α�
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