あなたに綺麗な傷をあげる
生涯、忘れられないように


死んでもいいと思えたんだ。
2007年01月10日(水)


華がそう言った。
「あの時、もうこのまま死んでもいいと思ったんだ」





昨日の朝。
帰省するためのバスの時間に合わせて、華があたしの部屋から出かけていった。
一時間だけ、一緒にいた。
出際に、あたしはいつもみたいに駄々を捏ねて、寂しがって。



↑コメント変わります↑


そりゃ、雪道を行く長距離バスなんだから、何があるか分からない。
最近は、高速道路の事故も多いんだから。



あたしは、まっすぐに華を見上げたまま。
溢れる涙を止められなかった。

唐突に、このひとを失う恐怖を思った。

このひとと、二度と会えなくなる孤独を思った。






それなのに。
華ときたら、暢気なもので。
泣き顔を必死で笑顔に繕って見送ったあたしに、
その夜の電話で、こんなことを言った。



「本当はあたしは、死にたくなったら海外に出て。
 好きなトコで好きなコトして、それで死ぬのがいいと思ってた。
 最期は砂漠で、死ねればいいと思ってた。

 でも、さ。
 いちごの泣いてる姿を見たら、ああ、今死ねたらいいな、って思ったよ。
 バスの中で。

 今、死ねたら、いちごはあたしのことが一番好きなままで。
 そんないちごを想ったまま、死ねるんだから。
 そうなったら、最高に幸せだと思った。」




あたしは、もう、泣くのを抑えられなかった。
朝のやりとりのせいで、一日心臓を痛めていたのに。

華がいなくなった後、あたしはきっと生きていけると思うけど。
一生、あなたのことを引き摺るんだと、分かっていた。
もしも後を追ったとしても、あたたちは今、物理的に繋がっているものは何もないから。
死んでも、一緒になることはないし。
お墓だってね、別々なんだ。
そんなことを考えて、仕事中なのに、鼻の奥がツンとしてて。




馬鹿。
ばか華。
嫌いだと何度も繰り返して、あたしは泣いた。





お願いだから。
その時は、あたしを連れて行ってくれなきゃ、だめだよ。
一人でなんて、狡いと思う。

華の馬鹿。



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