My life as a cat
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2003年10月16日(木) スローフードに憧れない世代

となりの家のおばあちゃんが分けてくれた自作のピーナッツでピーナッツ豆腐を作ろうと母とテレビを見ながらこつこつと殻を剥いていた。二人一時間かけて2カップ分しか剥けない。わたしは「すっごいスローフードだね。こんなに苦労して作るピーナッツ豆腐はさぞかし美味しいだろうね」と楽しんでいたのだけれど母はただ黙々と剥きながら母の実家で昔飼っていた牛の話をはじめた。

祖父は家で常に6頭〜10頭くらいの乳牛を飼っていた。機械を使うと牛が痛がって啼くので、祖父は椅子に座り居眠りしながらも手で絞っていた。朝になるとミルクを回収する業者が来て自分の家の分を残して出荷する。牛は放し飼いで、何度か逃げだして村中大騒ぎになったこともあった。牛が死んでしまうと解体して村中の人にお裾分けして食べるのだが、ギシギシでとても不味い。牛達は手で乳搾りをする祖父になついていたけれどある日祖父はこんな生活をやめて働きにでることを決め、牛を手放すことになった。業者が引き取りに来ると牛達はトラックに乗るのを脚を突っ張って嫌がり涙を流して泣いたそうだ。

昔の農家はこうやって自分達が口にいれるものと密接に暮らしてきた。けれど生まれた時からもうファーストフードもコンビニもファミレスもあってスーパーに行けばなんだってきれいにパックに詰められているわたしの世代はその食べ物が自分の口に入るまでの過程を知らない。だから大人になるころにはこの便利さに飽き飽きしてしまいスローフードなどというものに憧れゆっくりと時間をかけて全部はじめから作ってみたいと思うようになる。けれど母の世代は逆であって、不便なことを嫌がらないまでも楽しむこともあまりないようだ。


Michelina |MAIL