My life as a cat
My life as a cat
DiaryINDEXpastwill


2004年03月01日(月) ヴェネチアの宿

日本から梅も咲いて春がそこまで来ているとのメールが届いた。日本の春、桜、、、飛んで帰りたい気持ちでいっぱいになるのに、どこかで日本に帰るのを恐がっている自分がいる。早い世間の流れもあっさり忘れられて捨てられていくもの達もメディアの洗脳も動機の歪みすぎた犯罪も、キレやすい人々も。。。自分はそんな中で普通に育って暮らしてきたのに、一度そこを離れて外側から見てみたらそこへ帰っていくことが恐くなってしまった。が、こちらにずっと居られない理由や事情もあり5月には日本に帰る。わたしはどこの国にも受け入れられないような気分になる。

そんな帰国に対する期待と迷いと不安を抱えながら須賀敦子の「ヴェネチアの宿」という本を手に取り、まだ海外留学生などが今ほど多くなかった時代にイタリアやフランスに留学していた著者がその時に抱えた気持ちを書いた節に深く吸い込まれた。既に著者が苦難を乗り越え著名人となりシンポジウムのためヴェネチアを訪れ、仕事を終えホテルに戻る途中で突然劇場から通行人にもスピーカーで発せられたコンサートの音が古い記憶に重なる。

「ここにある西洋の過去にもつながらず、故国の現在にも受け入れられない自分はいったい、どこを目指して歩けばよいのか。ふたつの国、ふたつの言葉の谷間にはさまってもがいていたあのころは、どこを向いても厚い壁ばかりのようで、ただ、からだをちぢこませて、時の過ぎるのを待つことしかできないでいた。とうとうここまで歩いてきた。ふと、そんな言葉が自分の中に生まれ、私は、あのアヴィニヨンの噴水のほとりからヴェネチアの広場までの果てしなく長い道を、ほこりにまみれて歩きつづけたジプシーのような自分のすがたが見えたように思った」

わたしの状況はここまで大それたものではない。けれど少なからず海外で暮らす人達はこんなことを感じたりするのだろうか。そしていつか二つの国、二つの文化と自分の中で融合させて自然と生きていくことができるのだろうか。


Michelina |MAIL