My life as a cat
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2004年04月20日(火)

沢木耕太郎の「檀」という小説を読んだ。「家宅の火」という愛人との日々を綴って逝った作家、檀一雄の妻が語る檀についてインタビューした著者が妻の立場から「わたしは」という口調で書いたノンフィクションというちょっと複雑なもの。夫の小説を読んで知る自分への不満、愛人との一部始終。惨めさ、悲しさに揺れながらも夫への愛の深さが語られている。やがては風向きが変わり、妻の元に戻ってきた夫とポルトガルで過ごした一瞬の幸せの再来。が、後に肺癌にかかり夫は先に逝ってしまう。「裏切られる」という悲痛に胸を貫かれながらも、そこに淀む「深い愛情」に体中が火照るような小説だった。この時代の夫婦の絆というのはすごい。とても粘り強くて簡単には切れない。男性の存在は圧倒的に強いけれど、また女性に対する責任感というものもすごい。30年寄り添った夫を最後にこう書いている。

「あなたにとって私とは何だったのか。私にとってあなたはすべてであったけれど。だが、それも、答えは必要としない」


Michelina |MAIL