My life as a cat
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2021年08月04日(水) 夜のしっぽ

友人家族を夕飯に招く。フランス人でもぎょっとする裕福な地区の出の人しか使わないような言葉使いで喋る奥さんと、ひとまわり以上年下の寡黙な旦那さん、出来が良すぎる17才の娘さん。3人ともとても良い人達なのだが、浮世離れしてる。お寿司を出して、箸を渡したら3人とも心配になるくらい不慣れな手付きで頑張って食べてる。箸を普通に使いこなす外国人しか知らなかったから先進国でもこんな人がいるのかと驚いた。わたしの交友関係が偏っていただけなのか。彼らは新体験が楽しかったようで、喜んでくれた。娘さんは国際弁護士になると明確なヴィジョンを持ってて大学にも受かったのだが、ここへきて問題が。

「ワクチン打たないと通えないかも」

「あぁ。でもそうなったら諦めて打つでしょ?」

「大学行くの諦めるかな」

そっちか。未来を左右する重要な岐路なのだ。ワクチンで道を阻まれるべきじゃない。でも嫌なものは嫌だ。気持ちはよくわかる。どうにか突破口を見つけてほしい。

妊娠や出産の話題になり、奥さんがさらりと話す。

「わたしは9回妊娠して、6回流産してるから」

強烈。それでも3人子供を授かったのだからよかった。近所のタイ人の友人は4回流産してひとりも子供がいないまま50才になった。しかし、彼女は52才で初産した友達がいるらしく、"子供欲しいな!"などとまだ普通に話してる。妊娠や出産ばかりは自分の意志でコントロールできるものではない。隣人のマリーは子供がどうしても出来なくて、インドの孤児を養子にもらった。そして孫ができたのだが、今度はその子がダウン症なのだった。今彼女はその孫と二人で暮らしてる。その子も今日のゲストの娘さんと同じ17才。こちらが将来の明確なヴィジョンを持って勉学に励み、夕飯に招けばマカロンを焼いて持ってきたりするのに対し、この隣の子はローラースケートで転んで擦りむいた膝に血を滲ませながら手に松ぼっくりなんかを持って現れるのだから大分違う。ただ、どちらがいいかとは一概には言えない。完璧な人生を歩んできた人が一度コケてしまって、立ち上がり方がわからずそこで立ち往生し続けてるのを何度も目にした。わたしはどちらかというとこの完璧な17才のほうが心配なのだった。

話題は学校のことになり、彼らは自分の娘が出た私立の学校をすすめてくれた。公立の学校などに行くとドラッグだのセックスだのとあれこれ物騒だということ。この問題、いずれは答えを見つけなければいけないことだが、今はまだわからない。私立の学校へ入れて、同じような家庭の子同士でつるませているのがいいのか、それとも公立で早いうちから社会には色んな人がいるのだと学ばせたほうがいいのか。ただひとつ言えることは、こんな社会は嫌だ。私立に入れなければとか、大学に行かせなければとか(スティーブ・ジョブズの出現で、ロクちゃんの世代はもう学歴社会も崩壊してそうだが)。

ロクちゃんが機嫌よく座ってたので、けっこうゆっくりできたが、夕飯も7時位にはじめて11時前にはおひらき。楽しい会は余韻を残して、もっと喋りたかったというくらいで終わるほうがいい。ロクちゃんの就寝を口実に切り上げられるのは好都合なのだった。

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ロクちゃんの生誕以来夜通し眠ったことがなくて疲れてるのか、夜中の記憶が滅茶苦茶だ。ある夜はロクちゃんの手を握ったらその手が巨大で、"どうして急にこんなに大きくなっちゃったの!!"と飛び起きて、それがリュカの手だったということがあった。同じようなことが多々起きる。"ロクちゃん、ママが抱っこしてあげる"と抱きしめて体がはたまたデカい。また悲鳴をあげて飛び起きる。リュカに貼り付いてる自分がいた。大体朝起きてあれは夢だったか現実だったかと考えるけど、結局わからずじまい。最近ロクちゃんが自分で夫婦のベッドまで転がってきて、自分でシャツを捲くって勝手におっぱいを飲んでる。まさか、夢だろうと思ってたら、日中も油断してると人前で勝手にシャツをひっぱったりしておっぱいにかぶりついてくるようになって、夜中に起きてることは夢じゃないと知った。先日は夜中に氷が降って、ものすごい音がしていたらしいのだが、全く気付かず朝にリュカから聞いた。目が覚めたらもうリュカが仕事に行ってたということもあったな。こんな状態でもロクちゃんの授乳とおむつの交換だけはちゃんと出来てるのだから、母親の本能とはすごいものだ。


Michelina |MAIL