2006年12月25日(月) |
歯医者は夫婦仲をみる試金石 |
ある日のこと。男性の患者Mさんの治療を終え、Mさんが診療室を出て行った時のことです。受付さんが次の患者さんの名前を呼びました。
「Mさん、Mさんの奥様、どうぞお入り下さい。」
最近のうちの歯科医院の傾向ですが、一人だけでなく夫婦で来院される患者さんが目立つようになりました。うちの歯科医院は周囲を山や田畑で囲まれた田園地帯にあります。すなわち、田舎なわけですね。田舎であるせいかわかりませんが、患者層は決して若くはありません。どちらかというと高齢者の患者さんが多い地区でもあります。高齢者ということですから、既に退職されたり、農業をされている方が多い地区です。昼間からご夫婦一緒に暮らしている家庭が多いのです。このあたり会社や役所勤めの方が多い都会ではなじみの薄い光景かもしれません。 こういった地域特性があってでしょうか、うちの歯科医院では元々ご夫婦で診療の予約を取られる方が多かったのですが、最近、その傾向が強くなってきているように思います。
ご夫婦で治療を受けられている場合、僕は気を遣うことがあります。それは、なるべく同じようなペースで治療を行い、可能な限り同じ時期に治療を終了することができるよう段取りを組むことです。せっかく夫婦で時間を作って歯科医院に来られているわけです。しかも、歯科医院という場所は誰もがなるべく関わりあいたくない場所の一つでもあります。夫婦共に歯科医院へ来院することにより、歯科医院を受診する緊張感も少しは緩和されるはず。そんな思いをもって夫婦で歯科医院を受診されている方は決して少なくないと思うのです。 実際のところは夫婦ともに同じような診療ペースで終わるとは限りません。夫婦が同じような症状、治療内容であればいいのですが、どちらかの口の中の状態が悪く、夫婦のうちどちらかが診療を早く終わってしまうようなケースもあります。また、夫婦で来院するとそれだけ一家で負担する治療費用も増えることになります。なるべく治療費用を分散させ、毎月の経費を節約するために敢えて夫婦別に来院される方もいらっしゃいます。
僕は夫婦そろって歯科医院を来院することができる夫婦というのはうらやましいと思います。お互いに時間をやりくりして嫌な歯医者を受診する。そんなことができるには、夫婦ともに時間を調整することができる余裕があり、夫婦仲が睦ましくないとできないものだと思うからです。少なくとも、夫婦の絆がある程度強くないと、夫婦ともに歯科医院のような特殊な場所を訪れることはできないのではないでしょうか。
歯医者として思うには、夫婦で歯科医院を受診されるような夫婦が一組で多く増えればなあということです。これは単に夫婦で歯の健康を維持するというだけでなく、歯医者という緊張する場所へ夫婦ともに受診することにより、より夫婦の絆を再確認するきっかけにならないかと思うからです。 夫婦仲をみるには、歯科医院を共に受診できるかどうかが試金石になるかもしれない。 極めて歯医者的な発想ですが、このことは意外に当たっているのではないかと感じる歯医者そうさんです。
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