2007年01月13日(土) |
入れ歯を上手に使うには? |
誰しも自分の歯を失いたくないものですが、不幸にしてむし歯や歯槽膿漏で歯を失った場合、何らかの処置を施さないといけません。失った歯の本数が少なければブリッジができます。また、自費治療ではあるもののインプラントという手もあるでしょう。 多数の歯を失ったり、全ての歯を失った場合には入れ歯となります。実際のところ、多くの高齢者は入れ歯をはめておられているのが現状です。今日はそんな入れ歯の取り扱いについて注意すべき代表的なことをいくつか挙げていきたいと思います。
1.入れ歯は徐々になれていくべきもの 初めて入れ歯を入れる人に多いのですが、入れ歯をセットしたら直ぐにでも何でも食べることができると思われるかもしれません。これは間違いです。入れ歯はそれぞれの患者さんの口の中に合わせてつくっているオーダーメイドではありますが、同時に異物でもあります。自分の生まれ持っていた歯と同じように噛もうとしてもうまくいかない場合がほとんどです。最初は食べやすいものを選ぶこと、小さな柔らかい食べ物から順番に食べていくようにしていく必要があります。 その中で、噛みあわせがうまくいかなかったり、歯肉に痛みが生じたりする場合が出てきます。このような場合、歯医者が調整をしないと治りません。入れ歯が痛いからといってはずしていると、確かに入れ歯によって生じた傷はなおりますが、入れ歯を入れ直すと再び痛くなるという繰り返し。入れ歯をセットしてからは必ず何度か歯医者にかかり、調整してもらい、自分の口の中の状態、機能にあった入れ歯になじませていく必要があります。 また、よくあることなのですが、入れ歯が噛めないからといって噛める方の側だけで食べる人もいますが、口の中は左右均等に噛むべきものなのです。どちらか一方でかんでいると、かみ合わせのバランスが狂い、そのつけが顎に生じる場合もあります。注意が必要です。
2.入れ歯は優しく取り扱うもの 総入れ歯は別として、部分入れ歯の場合、クラスプという歯にひっかける金具が必ずついています。部分入れ歯を着脱する際、このクラスプを着実にひっかけるべき歯に適合させ、ゆっくりと着脱するようにして欲しいと思います。患者さんの中には、部分入れ歯を途中まで入れたら噛んでセットする人がいますが、これは止めて欲しいと思います。無理して噛んで部分入れ歯をセットするとクラスプそのものが曲がったり、破損したりすることになりかねません。
3.入れ歯はセット後、定期的に歯科医院で点検を 先ほども書いたことですが、口の中の状態に合わせてつくった入れ歯ではありますが、人工物でもあります。極端な話、入れ歯は複雑な形をした一枚の板とも言えます。顔の形が時間と共に変化するように口の中も時間経過とともに変わります。ところが、入れ歯は作った時の口の中の状態には合っていますが、経時的変化にはついていけません。その結果、入れ歯がはずれやすくなったり、噛むと痛くなる、入れ歯の裏側に食べかすが入りやすくなったり、入れ歯にひびが入ったり、割れたりすることになるのです。入れ歯は、最低6ヶ月に一回は歯科医院で点検を受けるようにしてほしいものです。入れ歯の症状がないような場合でも実際に歯医者が診れば、大きな問題、支障が生じている場合もあります。転ばぬ先の杖といいます。入れ歯は作ったら終わりというものではなく、定期的なチェックを歯科医院で受ける習慣を身に付けて欲しいと思います。
4.入れ歯の手入れについて 最後に入れ歯の手入れについてですが、通常の歯磨きと同様、食後には必ず入れ歯をはずして入れ歯を清掃して欲しいと思います。流水のもと、入れ歯専用の歯ブラシを用いて磨くようにして下さい。部分入れ歯の場合、入れ歯だけでなく、残っているご自身の歯も忘れずにきれいに磨かなくてはいけません。入れ歯を装着している人は入れ歯を装着していない人に比べむし歯や歯周病にかかりやすいのです。 入れ歯の清掃剤ですが、使用しても使用しなくてもいいと思います。大切なことはどんな方法、どんな薬剤を用いようとも確実に入れ歯の汚れを除去することです。入れ歯の清掃剤だけで入れ歯の汚れが取れるわけではありません。あくまでも入れ歯用歯ブラシと併用して効果的に入れ歯の汚れを取り除くようにして欲しいと思います。
就寝時、入れ歯ははずして寝るようにしましょう。入れ歯をつけたまま眠ると入れ歯にばい菌が繁殖し、口の中が非常に汚れる元になります。また、入れ歯と接している歯肉は入れ歯を装着していると常に圧迫を受けています。せめて眠っている間はこの圧迫を取ってやり、粘膜に休息を与える必要があります。そういった意味で、眠っている間、入れ歯ははずして欲しいと思います。 はずした入れ歯は乾燥を防ぎ、湿箱のような中で保管して下さい。入れ歯は乾燥させると材質の関係で割れてしまいます。通常は口という適度な唾液の湿り気のある環境で装着しているわけですから、入れ歯をはずしている時も同様の状況で保管する必要があるのです。
最後に入れ歯の安定材についてですが、入れ歯の安定材は基本的には使用するべきものではありません。入れ歯の安定材が必要な時は入れ歯が落ちやすかったり、安定しなかったり、噛むと痛みが生じるような時です。このような場合、入れ歯そのものを調整する必要があります。入れ歯に何か不具合が生じた場合、下手に入れ歯安定材に頼らず、お口の専門家である歯医者の元を訪ね、入れ歯を調整して欲しいと思います。もし、患者さんが動けなかったり、寝たきりの場合、歯医者も往診することができます。近所の歯医者さんに往診が可能かどうか問い合わせをした上で、往診治療で入れ歯の調整をしてもらうという手があります。ただし、往診の場合、保険治療でも治療費は通常の場合に比べ高額になることは覚悟して欲しいと思います。
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