歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年01月25日(木) スープの冷める距離、冷めない距離 後編

結婚を前提とした付き合いをしている場合、彼氏の両親と同居してもいいと言ってくれる女性は限られていると思います。今だから言えることですが、せっかく良いお付き合いをしていたにも関わらず結婚の段階となって、僕の考えを受け入れることができずたもとを別れていった女性はいました。さすがにその時は僕自身落ち込んだものです。僕の考えは間違っているのではないかと真剣に悩み苦しんだものです。そんな僕の悩みを親しい友人に相談したことがあります。彼のアドバイスは、最初は両親とは別居して、結婚生活に慣れてから両親と同居してはどうかというものでしたが、そのアドバイスは僕はどうしても受け入れることができませんでした。同居するなら結婚生活の最初から同居しないとうまくいくはずはないと信じていたからです。両親と別々に暮らし始め、結婚生活に慣れていったとしても、その時点で旦那の両親と暮らすということになって一番ストレスを感じるのは奥さんであることは目に見えていたからです。

昨年末、某所で忘年会があったのですが、そこで既婚の女性友人がこんなことを話していました。
その友人は、将来、旦那さんの仕事の関係で旦那さんの出身地に移る可能性があるとのこと。もし、そのようなことになったら、住む場所をどうしようかということを話していたそうです。すると旦那さん曰く
「俺の実家で住めばいいじゃないか?」
と言われたのだとか。
その言葉を聞いた途端、友人は思わず感情的になってしまったそうです。
「結婚して何年も経ってから私が貴方の両親と一緒に暮らすわけ?貴方は仕事場と家の間を往復するからいいでしょうけど、私はあなたよりもずっとご両親と暮らす時間が多くなるのよ。私の立場も考えてよね。」

彼女の言うことは無理もないことだと思います。これまで旦那さんと二人で暮らしてきた環境にいきなり旦那さんの両親が入ってくるわけです。その精神的ストレスは相当なものですし、彼女自身の居場所がどこにあるのか悩み続けなければならないことでしょう。
いくら諸事情があるとはいえ、女性の立場を考えると、これまでの生活を一変させるような旦那さんの両親との同居は、受け入れることは困難であることを僕は理解できました。

僕の願いを受け入れてくれる伴侶探しは難航しましたが、幸いなことに僕には人生の後半を共に過ごしてくれる女性が現れました。それが今の嫁さんなのですが、どうして嫁さんが僕の伴侶になってくれたのか正直言ってわかりませんでした。後日、僕は嫁さんに僕の両親と同居しても構わなかった理由を尋ねてみました。
すると、嫁さんの答えは
「何も考えなかったよ、ハッハッハ・・・」
と全く能天気な返事。

嫁さんの答えにもならない返事に“あてにならないなあ“と苦笑いしていたのですが、僕はあることに気が付いたのです。それは、嫁さんが僕の両親と同居するということに”何も考えなかった“のではないか、すなわち、違和感を感じなかったのではないかということでした。
愚考するに、嫁さんの育ってきた環境と僕が育ってきた環境は似ていました。嫁さんは若き頃、病気でお父さんを亡くし、母親に育てられてきたのですが、家の中には母親のお母さん、すなわち、母方のおばあさんが一緒に暮らしていたのです。嫁さん曰く、

「いつも朝ごはんはおばあさんが作ってくれていた。」
おばあちゃん子だったわけです。嫁さんは僕が育ってきた大家族ではないものの、核家族ではなく、三世代の家庭で育ってきたわけです。その意味で、核家族ではない環境で育ってきた僕と似た境遇だったわけです。嫁さんと僕とは育ちが似ていた者同士だと言えるかもしれません。

結婚を考える際、両親との同居、別居との兼ね合いでスープの冷める距離、スープの冷めない距離ということが言われることがあります。
どちらも一理ありますし、優劣をつけることはできないでしょう。ただ、男性、女性とも育ってきた環境に影響を受けるという考えは結構当たっているのではないかと思うのです。
昨日も書いた昨日書いた厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、平成15(2003)年の時点で日本において核家族世帯は全体の60%、単独世帯が23%を占めています。一方、三世代となると全体の10%、その他の世帯ではほぼ7%となっています。
現在の独身男女間で、両親とは別居を、すなわち、スープの冷める距離の結婚を望む人が多いのは、こうした家族環境が与える影響が大きいように思います。核家族で育ってきた人は男性、女性に関わらず結婚後も核家族のイメージしか想像できないのは自然なこと。また、大家族で育ってきた人は大家族のイメージが優先するものだと思うのです。僕のようなスープの冷めない距離の結婚を望む人が少数派であるということも大家族が少ないということから説明できるように感じます。

僕の希望どおり、嫁さんと僕の間に生まれた二人のチンチンボーイは、生まれた時から僕の両親と一つ屋根の下で暮らしています。幼少の彼らは両親と両親の親と住むことが当然であると考えています。大家族生活が彼らの成長にどんな影響を与えるか想像はつきませんが、家族のぬくもりを感じながらじっくりと成長してほしいものです。


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